嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「カイ……?」
「ごめん、起こした?」
「うん? ううん……」

 寝ぼけ(まなこ)で見上げるルチアは、いまだ夢の狭間にいるようだ。

「ねぇ、ルチア。起きたらさ、少し外の空気吸いに行こうか」
「そと?」
「うん、今日は天気もよさそうだし」
「さんぽ? 行く」

 しょぼつく目を何とか開けて、ルチアは大きなあくびとともに起き上がった。

「ルチアの髪、すごいことになってるよ」
「カイだって寝ぐせがひどいじゃない」

 ぷっとふたり同時に吹き出して、互いの髪を整え合った。じゃれ合いながら湯を浴びたあと、数日ぶりに衣服を纏う。

「ここら辺ってちっとも雪が積もってないのね。春みたいにあったかいし」
「この森一帯は地熱のおかげで年中こんな感じなんだ。夏はかえって暑いけど」

 たあいのない言葉を交わしながら小路を進む。途中で見つけた野いちごを、カイはルチアの口に放り込んだ。

「見て、カイ! きれいな花がいっぱい……!」

 たどり着いたのは湖畔に広がる花畑だ。そこめがけて駆けていき、ルチアはくるくると踊るように辺りを見回した。かと思うとしゃがみ込んで、花を摘んでは編んでいく。

「どう? 上手でしょ?」

 無邪気な笑顔で、出来上がった花冠をカイの頭に乗せてくる。鼻歌交じりにルチアはもうひとつ花冠を編み出した。

「それ、なんて歌?」
「知らない。小さいとき母さんがよく歌ってくれたの」
「ふぅん。もっと歌ってよ」

 寝ころんだカイはルチアの膝に頭を預けた。調子の外れた歌声が森の湖畔に響いていく。
 膝から見上げた日の光に、カイは眩しく目を細めた。風にさらわれたルチアの赤毛を、追いかけるように手を伸ばす。

< 397 / 465 >

この作品をシェア

pagetop