嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
 黒ツグミのアムゼルを肩に乗せ、むくれ気味でピッパは後宮の廊下を歩いていた。
 今日は母であるイジドーラの公務に同行し、王妹としての責務を果たしてきた。ピッパの機嫌を損ねたのは、そこで聞こえてきた神官たちの心ない言葉の数々だ。

 ――出来損ないの王女

 以前からそう陰口を叩かれていたのは、ピッパ自身も知っている。そんなふうに言われる理由は、異母姉のクリスティーナと違ってピッパは巫女の資質を持ち合わせていないからだ。

 直系の血を引くくせに、何の価値も見出せないとは。夢見の巫女(クリスティーナ)を失ったとき、その声はさらに大きくなった。

 他人から向けられたむき出しの悪意に、ピッパは深く傷ついた。しかし王族として弱さを見せてはならないのだと、子供ながらに心得てもいる。

(お母様のように堂々としていなくては)

 甘やかされて育ってきたピッパだが、イジドーラだけは過保護に接することはほとんどなかった。
 失敗からは学ばせて、正しき行いにはきちんと称賛を与えてくれる。そんな母をずっと見てきたピッパが、自然と王族の誇りを身に着けたのは当然の結果と言えるだろう。

 しかし今日はその誇りを神官たちに傷つけられた。巫女姫の力を持たないピッパに、言い返すことはできはしない。そのことがまたピッパを強く苛立たせた。

 足を止め、こぶしをきつく握りしめる。
 と、おとなしくしていたアムゼルが、ふいにピッパの肩から飛び立った。

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