嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 昼間は相変わらず寡黙(かもく)なジークヴァルトも、寝台の上ではそれなりに饒舌(じょうぜつ)だ。最近は行為に余裕が見えてきて、翻弄(ほんろう)されるばかりのリーゼロッテは少しばかりそれがおもしろくなかった。

「ねぇエラ。ヴァルト様は毎朝、何時ごろお仕事に行かれてるか分かる?」
「そうですね……日によってまちまちですが、早い日は四時、五時のときもございますね」
「そんなにお早いの? ヴァルト様、ちゃんと眠っているのかしら……」

 リーゼロッテが眠るのは大概明け方だ。夫婦の営みは一晩中続けられ、気絶するように寝落ちする。そのあとジークヴァルトがどうしているのかまるで記憶になかった。

「旦那様の健康管理はマテアスがしっかりやっておりますから。リーゼロッテ奥様はご自分のご体調を第一にお考えください」

 エラに微笑まれ、さらに頬に熱が集まった。朝方までふたりでイチャコラしています的な発言だったと、今さらながら気づいてしまった。視線をそらし、慌てて別の話題を探す。

「エラこそ体調はどう? 悪阻(つわり)でつらくなったりしていない?」
「はい、今のところはそれほどひどくありません。ロミルダも辺境の砦からこちらに戻ってきてくれましたし、侍女長を継いだばかりなのに迷惑をかけ通しです」
「そんな、おめでたいことだもの。ロミルダだって孫の顔が見られるってよろこんでいるでしょう? お腹の赤ちゃんのためにも、エラはちゃんと自分を優先しなくては駄目よ?」

 エラは今妊娠二か月だ。安定期を過ぎるまでは、できるだけ安静にしていてほしかった。そんな大事な時に、自分にかかりきりにさせるのも申し訳なく思える。

「無理はいたしません。ですがリーゼロッテ奥様のお世話は、できる限りわたしにやらせてください」
「本当に無理しては駄目よ? 約束ね」

 そう念を押してから、リーゼロッテは自分の部屋で束の間の平和な時間を過ごすのだった。

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