嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
      ◇
 ようやく帰り着いた家で、ルチアは鬱陶しい栗色のかつらをはぎ取った。きつく編んだ赤毛の三つ編みを解き、ほっと息をつく。

「ただいま、母さん」
「お帰りルチア、お祭りの手伝いはどうだった?」
「今日は花冠を三つも編んだの。はじめよりずっと上手に……」

 ふいに訪れた下腹部の違和感に、ルチアは言葉を切った。おそるおそる下着の中を覗き込む。股から出血していることに気がついて、ルチアは色を失くした顔を母アニサへと向けた。

「ルチア? どうしたの?」
「母さん、なんか血が出てる……」

 ルチアの下着を確かめたアニサは、小さく息を飲んだ。しかしすぐに笑顔になって、ルチアをぎゅっと抱きしめてくる。

「なにか変な病気かな? ねぇ、わたし死んじゃうの?」
「大丈夫よ、ルチア。この出血はね、ルチアが大人の体になって子供が生める準備ができたというしるしなのよ」
「大人になって子供が……?」
「そう、女性なら普通にあることよ。病気ではないの。だから安心して」
「本当に? よかった……」

 まだお腹は痛かったが、母親の落ち着いた表情にルチアは心から安堵した。

「……ルチアももうそんな歳になったのね」

 感慨深そうにアニサの目が細められた。

「着替えたら少し話をしましょう。とても大事なことだから」

 薄い毛布を肩に掛けられ、ルチアはアニサとともに寝台の縁に並んで座った。やさしく髪を撫でられて、甘えるように母の胸にもたれ掛かる。

「これまでも見知った人だとしても、他人に肌を見せたり触らせてはいけないと言ってきたでしょう?」
「わたしの大切な体だから?」
「そうよ。これからはもっと気をつけなければならないわ。特に男の人にはね」
「女の人は? 誰にもあざを見られたら駄目なんでしょう?」
「それもあるけれど、今日の話はまた別のことなの。大人の男の人はね、女の人の肌に触れて繋がりたいって欲求が強いのよ。だから……」

 言葉を選んでいる様子のアニサを、ルチアは前のめりにさえぎった。

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