嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「それ、わたし知ってる! 裸で抱き合って汗をかきながら男の人の硬い棒をここに突っ込むんでしょう?」
「ルチア! あなたどこでそんな話を……!」
「今日、みんなが言ってたわ。男と女のイロゴトは知っておいた方がいいって、いろいろ教えてくれたの」

 絶句しているアニサを前に、ルチアは今日得た知識を指折り数えていった。

「ええっと、恋人同士は裸で抱き合うんだけど、初めては痛くて血がいっぱい出るの。それでも何回かするうちに気持ちよくなれるのよ。だけど相手がへたくそだといつまで経っても痛いんだって。だから初めては慣れた人がいいとも言われたわ。あと、恋人は体の相性で選んだほうがよくって、でも結婚するならお財布で相手を決めるべきだって……」
「もういいわ、ルチア……」

 制されて、ルチアはそこで口をつぐんだ。アニサは目を片手で覆い、その状態で天を仰いでいる。しばらくするとふぅっ小さく息を吐き、気を取り直したようにルチアに向き直った。

「いい、ルチア。よく聞いて。確かに男女は裸で抱き合うことがあるわ。でもね、これは誰彼なく軽率にすべきことではないの」
「赤ちゃんができちゃうこともあるから?」
「そうよ。ルチアが好きになって、その人もルチアのことをきちんと大事に思ってくれる、そんな相手でないと絶対にそういう行為をしてはいけないわ。わたしが言っている意味は分かる?」

 ルチアは神妙に頷いた。アニサ以外の誰かに触れられるのは、今のルチアにとってはすごく怖く感じられた。

「まぐあいはね、子供を作るだけが目的ではないの。心を通わせたもの同士が愛を確かめ合うための、とても大切なものなのよ」
「あいを確かめ合う……?」
「愛する人と結ばれることは、体だけではなく何よりも心が満たされるものだから」

 母の言葉を自分の中でかみ砕こうと、ルチアは懸命に頭を巡らせた。だがいまいち理解が追いつかない。

「ルチア。わたしはね、愛する人と結ばれることこそが、女性にとっていちばんのしあわせだと思っているの。だからルチアがもっと大人になったら、誰よりも好きになった男性(ひと)と心から愛し合えることを願っているわ」
「誰よりも、好きに……」
「だから最初の話に戻るけれど、軽々しく誰かに体を触らせては駄目なのよ。いつかその人に出逢うまで、ルチアは自分のことを大事に扱わなくてはいけないの。分かるわね?」

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