嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 アニサにじっと見つめられる中、ルチアは小さく頷き返す。微笑んで、アニサはルチアの額にやさしく口づけた。

「今はそれだけ分かっていれば十分よ。まだ少しつらそうね。まぐわいの詳しい話はまた明日にして、今夜は早めに休みましょう」

 あったかい布団の中、ふたりで抱き合い丸くなる。

「おやすみ、わたしの可愛いルチア」
「おやすみなさい、母さん」

 アニサの手がやさしく頭を撫でてきて、心地よさにルチアの意識は夢の世界へと沈みかけた。そんな中、ふと小さな疑問がもたげてくる。アニサこそ、いちばん好きな人と結ばれ愛し合うことができたのだろうか。 
 聞きかけて、結局口に出すことは出来なかった。ルチアがもっと幼いときに、父親のことを一度だけ尋ねたことがある。そのときの悲しそうな母の顔が、ルチアはいまだ忘れられないでいた。

「ねぇ、母さん……母さんは今、しあわせ?」

 まどろみながら問いかける。動きを止めた手に、ぎゅっと強く抱きしめられる。

「もちろんよ、ルチア」

 額に唇が落ちた感触がして、ルチアは夢うつつに微笑んだ。
 今もしあわせと言うのならば、(アニサ)はいちばん好きなひとと結ばれたのだろう。きっとそういうことに違いない。

 そんなことを思いながら、ルチアは深い眠りに落ちていった。





番外編 いつかそのひとに出逢うまで おわり
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