嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
      ◇
 冬晴れのサロンで膝の上、あーんと菓子を差し出される。口いっぱいのしあわせを堪能していると、親指でそっと下唇を(ぬぐ)われた。

(この穏やかな時間も今日までね……)

 月のものが終わりに近づき、明日からはまたまぐあい三昧(ざんまい)の日々に突入だ。
 その前にと思って、リーゼロッテはラッピングされた箱をジークヴァルトに差し出した。

「一日早いのですが、ジークヴァルト様、お誕生日おめでとうございます」
「ああ、もうそんな時期か」

 自分のことには無頓着なジークヴァルトだ。誰からも言われなくなったら、何歳(いくつ)になったのかもそのうち忘れてしまうに違いない。

「開けてもいいか?」
「もちろんですわ」

 リボンを(ほど)く指の動きをわくわくと見守った。

(ちゃんとよろこんでもらえるかしら……?)

 去年贈ったブランケットは直接手渡すことができなかった。それだけに期待と不安が入り混じる。

「これは……万年筆か?」
「はい、こちらなら執務で使えますでしょう? 職人に頼んでここに守り石を施してもらいましたの」

 黒いペン軸にリーゼロッテの緑の輝きがはめ込まれている。目の前に万年筆を掲げ、ジークヴァルトはうれしげに目を細めた。

(よかった。気に入ってくれたみたい)

 他人が見たら、全くの無表情に見えたことだろう。正確にジークヴァルトの喜怒哀楽を読み取れるのは、実のところリーゼロッテとマテアスくらいのものだ。

「しまい込まずにちゃんと使ってくださいませね?」
「ああ、午後の執務からさっそく使おう」
「うれしいですわ。わたくしもヴァルト様と一緒にお仕事をしている気分になれますもの」

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