嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「だが、そうだな……」

 思案顔のジークヴァルトの指が、無意識のように頬を撫でてくる。温かな手のひらにリーゼロッテも無意識のまますり寄った。

「領民がよろこぶ姿を見たときに、リーゼロッテ、お前はうれしく思うのか?」
「はい、とっても」

 憂いなく領民が笑顔で暮らしている。そんなよろこばしいことはない。
 だがその笑顔も、ジークヴァルトが頑張っているから得られるものだ。領民が心よりジークヴァルトに感謝していることこそが、リーゼロッテはうれしく思えて仕方がなかった。

「ふっ、そうか。ならばそれをやりがいにオレは執務に励むとしよう」
「そんな……そこは領民のために励んでくださいませ」
「別に問題ないだろう? やるべきことをこなすことに変わりはないんだ。どのみち執務中にオレが考えているのはお前のことだしな」
「執務中に? わたくしのことを?」
「ああ」

 それ以外に何があるんだと言わんばかりの態度に、リーゼロッテの口元がむにむに(ゆる)む。

「忙しい合間にちょっとでも思い出していただけてるなら……わたくし、その、うれしいですわ」

 もじもじしながら素直な気持ちを伝えてみた。恥ずかし過ぎて、熱い頬を両手で覆う。
 そんなリーゼロッテを見て、再びジークヴァルトの眉間にしわが寄った。

「合間にちょっとでも? 馬鹿を言うな。オレがずっと考えているのはお前のことだけだ」
「わたくしのことだけ……? え? 執務中にずっと?」
「ああ」
「え? え? ですがお仕事の最中にいくらなんでもそんな……」
「支障などない。いや、むしろその方が執務が(はかど)るぞ」

 至極真面目な青の瞳と見つめ合う。

(え? え? え?)

 夫婦となった今でも、ジークヴァルトの破天荒ぶりにはついていけないリーゼロッテだった。

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