嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
顔見知りがいた方が、ピッパも安心できると思ったのかもしれない。後宮の東屋では話し相手になってくれた恩もある。少々我が儘な少女だが、王族の立場ならそれも当たり前のことなのだろう。
「それはそうと、マルコさん。次からはマルコさんに神事を取り仕切っていただく予定ですので」
「え、レミュリオ様は? いらっしゃらないんですか?」
「わたしは遠方の地で重要な務めがありましてね。次回から役目を降ろさせていただくことになりました」
「そんな、ボク独りでだなんて……」
「何、大丈夫ですよ。マルコさんなら立派に勤め上げられます」
不安顔のマルコをよそに、レミュリオは静かに立ち上がった。
「そろそろ時間ですね」
古びた扉を開き、祈りの泉のある部屋へと入っていく。マルコもそれに続いていった。
「ピッパ様、お時間です」
「遅いわ。どうしてもっと早く迎えに来られないの」
「申し訳ございません。神事にはいろいろと決まりごとがあるのですよ」
レミュリオの声がけに、不機嫌そうにピッパは返した。
ハラハラと見守るマルコと違って、レミュリオは普段通りの柔らかな笑みを刷いている。
「口答えはいいわ。マルコ、行きましょう」
「えっ、あ、ピッパ様! すみません、レミュリオ様」
「どうしてマルコが謝るのよ」
「すみませんっ」
「だからどうして謝るの。いいから早く来なさい!」
さっさと出ていこうとするピッパを、マルコは慌てて追いかけた。神事の最中、巫女の世話をするのは神殿側の役割だ。
「あの、ピッパ様、お疲れ様でした」
「別に疲れてなどいないわ。今日は何も言霊が降りて来なかったもの」
「本来神託はそうそう降りるものではありません。先日までのピッパ様の功績は、これまで類を見ないものですし」
「そうでしょう? マルコと違ってわたくしは優秀なのよ」
「本当にその通りです! ピッパ様ほど夢見の巫女に相応しい方はおりません!」
おだて半分本心半分で、マルコは必死にピッパのご機嫌を取った。彼女の性格を考えると、へそを曲げたが最後、神事に出ないなどと言い出しかねない。
本当に次回から自分独りで神事を取り仕切ることができるのだろうか。
まるで自信が持てなくて、マルコは黙って後ろをついて来るレミュリオに視線を向けた。
「なにやら面白いことになってきましたね」
「え、何かおっしゃいましたか?」
「いいえ、何でもありませんよ」
「マルコ! 早くしなさいったら!」
「は、はいっ、いま行きますっ」
あのピッパを前にして平然としているレミュリオを見て、益々自信を失ってしまったマルコだった。
「それはそうと、マルコさん。次からはマルコさんに神事を取り仕切っていただく予定ですので」
「え、レミュリオ様は? いらっしゃらないんですか?」
「わたしは遠方の地で重要な務めがありましてね。次回から役目を降ろさせていただくことになりました」
「そんな、ボク独りでだなんて……」
「何、大丈夫ですよ。マルコさんなら立派に勤め上げられます」
不安顔のマルコをよそに、レミュリオは静かに立ち上がった。
「そろそろ時間ですね」
古びた扉を開き、祈りの泉のある部屋へと入っていく。マルコもそれに続いていった。
「ピッパ様、お時間です」
「遅いわ。どうしてもっと早く迎えに来られないの」
「申し訳ございません。神事にはいろいろと決まりごとがあるのですよ」
レミュリオの声がけに、不機嫌そうにピッパは返した。
ハラハラと見守るマルコと違って、レミュリオは普段通りの柔らかな笑みを刷いている。
「口答えはいいわ。マルコ、行きましょう」
「えっ、あ、ピッパ様! すみません、レミュリオ様」
「どうしてマルコが謝るのよ」
「すみませんっ」
「だからどうして謝るの。いいから早く来なさい!」
さっさと出ていこうとするピッパを、マルコは慌てて追いかけた。神事の最中、巫女の世話をするのは神殿側の役割だ。
「あの、ピッパ様、お疲れ様でした」
「別に疲れてなどいないわ。今日は何も言霊が降りて来なかったもの」
「本来神託はそうそう降りるものではありません。先日までのピッパ様の功績は、これまで類を見ないものですし」
「そうでしょう? マルコと違ってわたくしは優秀なのよ」
「本当にその通りです! ピッパ様ほど夢見の巫女に相応しい方はおりません!」
おだて半分本心半分で、マルコは必死にピッパのご機嫌を取った。彼女の性格を考えると、へそを曲げたが最後、神事に出ないなどと言い出しかねない。
本当に次回から自分独りで神事を取り仕切ることができるのだろうか。
まるで自信が持てなくて、マルコは黙って後ろをついて来るレミュリオに視線を向けた。
「なにやら面白いことになってきましたね」
「え、何かおっしゃいましたか?」
「いいえ、何でもありませんよ」
「マルコ! 早くしなさいったら!」
「は、はいっ、いま行きますっ」
あのピッパを前にして平然としているレミュリオを見て、益々自信を失ってしまったマルコだった。