嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
      ◇
 石造りの寒々とした部屋。唯一ある窓は天井近く、僅かな陽の光を届けるのみだ。
 ツェーザルがこの流刑(るけい)の地に追いやられ、はや十八年が経とうとしている。本来ならばザイデル家当主として、今も豪華な暮らしをしていたはずだった。

(それどころか多くの者を従えて、一国の王として君臨していたかもしれぬのに……)

 家督は弟のゲルハルトに奪われて、ことさら可愛がっていた妹イジドーラにさえ裏切られた。貴族の地位を剥奪された苦き日が蘇り、ツェーザルの瞳に怒りの炎が燃え盛った。
 罪人の証として当てられた焼き(ごて)は、痛み以上の恥辱を与えた。生まれながらにして高貴なこの身が、これ以上ないがしろにされていいはずもない。

「ツェーザル・ザイデル様。半年ぶりに訪問させていただきました。お加減はいかがですか?」

 年に二度、決まり事として神官が事務的に訪れる。ここ数年は女のような顔をした盲目のレミュリオが来るようになった。

「答えるまでもない。こんなかび臭い場所で気分良く過ごせる訳はなかろう」
「それはいけませんね。人道的な待遇を施すのが神殿の意向です。早急に対処いたしましょう」
「そう思うなら今すぐ我が身を解放しろ」
「ツェーザル様が囚われの身となっているのは、貴族社会での決まり事。神殿に籍を置くわたしにはどうにもできかねますね」

 瞳を閉じた銀髪の神官は、感情を載せないまま形だけの笑みを作った。

「ツェーザル・ザイデル様に青龍の加護があらんことを。わたしにできるのはそう祈ることだけです」
「オレは神など認めない。そんな紛い物はねじ伏せて、いつかこの手に栄光を掴んでみせる」
「長期間の投獄生活にもかかわらず、不屈の心をお持ちのご様子。なんとも素晴らしい精神力ですね」

 感心したかのようにレミュリオは胡散臭い笑みを深めた。これまでやってきた神官ならば、気分を害して嫌な顔のひとつもしているところだ。

「その(たぐい)(まれ)なる力を別の方向にお使いになれば、王も快く恩赦を授けてくれましょうに」
「下賤の血を引く者の温情など受けてたまるものか」

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