嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 ここ何代も赤毛の王が続いていたのは、百年ほど前の時代に市井の女を王妃に迎えたからと聞く。その子孫である先王ディートリヒは、隣国の王女を妻として迎えた。ましてふたりの間に生まれたハインリヒが、正当な王家の血筋と認めることなどできようか。

「一週間ほどはこちらにいる予定です。その間は毎日お伺いしますので、ゆっくりと話をお聞かせください」

 去っていくレミュリオを嘲笑とともに見送った。

「罪人の戯言(たわごと)と、まともに取り合わぬつもりのようだ。ふん、今はそうやって侮っておればいい」

 正義がねじ曲げられたまま、屈辱の日々に甘んじてきた。だがそれも間もなく終わりを告げる。

「高貴な血を引く我が身こそが、この国を()べるに相応(ふさわ)しい」

 いずれ蛮族から取り戻して見せよう。地位も金も、煌びやかな暮らしも何もかも。そして裏切者どもをすべて地獄へ叩き落とすのだ。その瞬間を思っただけで、言い知れぬ高揚感に満たされた。

 この十八年、幾度も脱出を試みてきたが、すべて未遂に終わって今に至る。
 しかし今回は違う。時間をかけ綿密に計画を立ててきた。今こそ動くべき時なのだと、天がそう告げている。思いもよらない協力者が現れたのは、正にその現れだ。

 若かったあの頃も、ツェーザルは常に慎重だった。父親を事故に見せかけてこの世から葬り去り、公爵位に就いたあとも焦らずに事を進めるつもりだったのだ。
 過ぎ去りし日の憎しみが、昨日のことのように湧き上がった。

「あの女さえ余計なことをしなければ……」

 時間的にこれが最後の機会となるだろう。
 そう覚悟して、抑えきれない野心がいっそうツェーザルの胸を(くすぶ)った。

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