嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「お口に合いませんでしたか?」
「……いや、お前が淹れる紅茶がいちばん美味いと思ってな」
「そう言っていただけるとオレの努力も報われます。何しろハインリヒ様のために、日夜試行錯誤を繰り返しましたから」
おちゃらけた仮面をかぶりつつ、カイの行動は実に堅実だ。成果を得るためならどんな小さな努力も惜しまない。その優秀さはハインリヒの右腕として、ずっとそばに置いておきたいと思えるほどだ。
「そういやジークヴァルト様はどうされたんですか?」
「ヴァルトは出仕免除中だ。昨年の秋口からオーランウヴスに不穏な動きがあってな」
「オーランウヴスに? ヴォルンアルバの国境に問題でも?」
一を言うだけで十理解するカイは、やはりハインリヒにとって貴重な存在だ。ジークヴァルトはこちらの要求には完璧に応えるが、逆に言うと求められた以上のことは指一本動かそうとしてこない。
比べてカイは、常に言わずともかゆいところに手が届く対応を返してくる。人のあしらいにも長けているカイは、本来宰相のような地位に就けるべき逸材なのだろう。
――カイが龍から理不尽な託宣を受けさえしなければ。
出かかった言葉を喉の奥に封じ込めた。こんな自分本位な考えなど、カイを冒涜するに等しいことだ。自身の運命を呪う気持ちは、ハインリヒには痛いほどよく分かっていた。
「頼みたい調査って、もしかしてそれ関係ですか?」
「そうだ。主にヴォルンアルバの下町で情報収集をして欲しい」
「下町で……? ああ、歴史は繰り返すってやつですね」
得心が行ったようにカイは頷いた。
遠い過去の話だが、国交のない隣国オーランウヴスが山脈を越え侵攻してきたことがある。その時に斥候部隊が偵察のため下町に入り込み、情報収集していた記録が残されていた。
「侯爵家の手の者を動かしてもいいですけど、情報収集には不向きかと。ヴォルンアルバのような土地は余所者に厳しいですからね」
普段デルプフェルト家では町民として生活に溶け込み、細部に渡って情報を集めている。辺境の地は管轄外なため、土台作りから始める必要があるだろう。
「ここはいっそ、バルバナス様をヴォルンアルバにお送りになられては?」
「伯父上をか?」
「住民が騎士団の視察に気を取られている間なら、オレも町中で情報収集しやすいですし」
「余所者がいても不振に思われることはないというわけか」
「隣国への牽制にもなりますし、潜伏中の賊がおかしな動きをみせるかもしれません」
「……いや、お前が淹れる紅茶がいちばん美味いと思ってな」
「そう言っていただけるとオレの努力も報われます。何しろハインリヒ様のために、日夜試行錯誤を繰り返しましたから」
おちゃらけた仮面をかぶりつつ、カイの行動は実に堅実だ。成果を得るためならどんな小さな努力も惜しまない。その優秀さはハインリヒの右腕として、ずっとそばに置いておきたいと思えるほどだ。
「そういやジークヴァルト様はどうされたんですか?」
「ヴァルトは出仕免除中だ。昨年の秋口からオーランウヴスに不穏な動きがあってな」
「オーランウヴスに? ヴォルンアルバの国境に問題でも?」
一を言うだけで十理解するカイは、やはりハインリヒにとって貴重な存在だ。ジークヴァルトはこちらの要求には完璧に応えるが、逆に言うと求められた以上のことは指一本動かそうとしてこない。
比べてカイは、常に言わずともかゆいところに手が届く対応を返してくる。人のあしらいにも長けているカイは、本来宰相のような地位に就けるべき逸材なのだろう。
――カイが龍から理不尽な託宣を受けさえしなければ。
出かかった言葉を喉の奥に封じ込めた。こんな自分本位な考えなど、カイを冒涜するに等しいことだ。自身の運命を呪う気持ちは、ハインリヒには痛いほどよく分かっていた。
「頼みたい調査って、もしかしてそれ関係ですか?」
「そうだ。主にヴォルンアルバの下町で情報収集をして欲しい」
「下町で……? ああ、歴史は繰り返すってやつですね」
得心が行ったようにカイは頷いた。
遠い過去の話だが、国交のない隣国オーランウヴスが山脈を越え侵攻してきたことがある。その時に斥候部隊が偵察のため下町に入り込み、情報収集していた記録が残されていた。
「侯爵家の手の者を動かしてもいいですけど、情報収集には不向きかと。ヴォルンアルバのような土地は余所者に厳しいですからね」
普段デルプフェルト家では町民として生活に溶け込み、細部に渡って情報を集めている。辺境の地は管轄外なため、土台作りから始める必要があるだろう。
「ここはいっそ、バルバナス様をヴォルンアルバにお送りになられては?」
「伯父上をか?」
「住民が騎士団の視察に気を取られている間なら、オレも町中で情報収集しやすいですし」
「余所者がいても不振に思われることはないというわけか」
「隣国への牽制にもなりますし、潜伏中の賊がおかしな動きをみせるかもしれません」