嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 ――憂うべきは過去でも未来でもなかろうに
 ――かつての悲劇も、残された禍根も
 ――みなみな龍の思し召しじゃ

 次々にしゃべり出した王たちは、しかしそれだけ言うと尻(すぼ)みに再び押し黙ってしまった。

(そういうことではない? それにしてもこの沈黙は一体どういう了見なのだ……?)

 訝しげに眉根を寄せたハインリヒに、たった一言だけが小さく漏らされた。

 ――盟友との別れとあらば、邪魔をするのも無粋であろう?

 はっと顔を上げたハインリヒを、カイは黙って見つめている。いつまでも黙っているハインリヒに、カイは(さと)すように口を開いた。

「これからの治世にも係わりますし、ここらで本格的に関係の修復を試みられては?」

 そう駄目押ししてくるカイに、上手く言葉が返せない。

「ハインリヒ様?」
「ああ……そうだな。辺境の地へ騎士団を向かわせる(むね)、検討しよう」

 ようやくそれだけ言葉にした。頷いたカイがふっと遠くを見やる。

「では準備もありますので、オレはそろそろお(いとま)します」
「まだ間はあるが、雪解け前までにはオーランウヴスの動向を探っておきたい。大儀だがよろしく頼む」
「お任せを」

 そう言ってカイは恭しく腰を折った。

「そうだ、行く前にひとつお願いが。出来得れば、でいいんですけど」
「なんだ?」
「王妃殿下にご挨拶できないものかと思いまして」
「アンネマリーに?」
「ええ、王城を離れる前にぜひ一度」

 いつもと変わらない笑みを浮かべるカイに、それ以上理由を聞くこともなく、ハインリヒは承諾を返した。

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