嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
(時間がない、か……)

 侯爵が問うてきた通り、自分はもうじき()くだろう。立派に託宣を成し遂げたカイを、果たしてベアトリーセは喜び迎えるのだろうか。

 そこまで思って、カイは自嘲の笑みを口元に漏らした。
 誰かの称賛を得るために、命を懸けるなど馬鹿らし過ぎる。カイは自ら進んでルチアの託宣を阻み、カイの意思をもって星に堕ちるのみだ。

 次の目的地に向かうため、足早に厩舎(きゅうしゃ)へ向かう。大方の引継ぎを終えたとしても、まだここにいる以上任務で頼られるのは仕方のないことだった。
 幸いこれから行く先は王都とは逆方向だ。片付き次第、その足でブルーメ領へと向かえばいい。
 愛馬を引き、鞍に乗りかけたところで駆け寄ってきた男に引き留められる。

「カイ様! よかった、間に合って」

 息も絶え絶えに、男は一通の封書を差し出してきた。

「こちら、エリザベス様からの伝達です」
「ベッティから?」

 何かあったのかと、急ぎ中を確かめる。

(今ルチアはフーゲンベルク家に……?)

 北へ出発する前に知れて良かったと思いつつ、公爵家にいては夜這いのため忍び込むのは困難だ。
 どのみちカイは、ハインリヒの(めい)で辺境の砦に行かねばならない。このあとルチアもヴォルンアルバに向かうのであれば、隙を見てそこで会うことは可能だろう。

(いや待てよ……)

 ベッティの報告では、ルチアが移動するまでまだ間がありそうだ。あれこれと考えつつ、任務にかかるであろう日数と移動時間をはじき出す。しばらく思案していたカイは、手短に(ふみ)をしたためた。

「フーゲンベルク家のベッティに届けて。ああ、あとこれも一緒に渡しといてよ」

 手紙とともに、石をひとつ取り出した。軽く握り込むと、くすんだ石が琥珀の輝きを放ち始める。

「承知しました。急ぎ届けます」
「うん、よろしく」

 男を見送って、カイも馬にまたがった。
 こうなれば王都から離れるのは(かえ)ってあだとなってしまったようだ。

 考えても仕方がないと、無心でカイは馬を走らせた。

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