嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 よく分からない話をでっち上げ、ふたりしてさらに裏路地を進んだ。行くほどにガラの悪そうな野郎どもの視線がグサグサ刺さる。
 時に舌打ちが聞こえ、どの男からも挑戦的な目つきを向けられた。下っ端とは言え、彼らにしてみれば王都から来た騎士は鼻持ちならないエリートに思えるのだろう。

「ナンで、こんなトコロにキシのヤツらガ……?」
「トリアえズ行コウ」
「だめダ、いま動クとふしんガられる」

 ふいにそんな会話が耳に届いた。フードを目深にかぶった小柄なふたり組だ。
 地方から来る人間は、訛りがあってもおかしくはない。それに後ろ暗い経歴を持つ人間はゴロゴロいる。騎士を見て逃げ出したくなる理由があったとしても、何も不思議はない話だった。
 それでもカイはニコラウスと目くばせし合う。

「お~い、猫ぉどこ行ったぁ? おっかしいなぁ、確かこっちの方に逃げてったと思ったんだけど……」
「ラル先輩、あっちの方なんじゃ?」

 演技を継続したまま、ニコラウスは男たちの横を通り過ぎた。後に続いたカイが遠ざかると、二人組は途端に奥へと身をひるがえす。
 行き過ぎたふりをして、すぐさまカイはその背を追いかけた。ニコラウスも同様に、気づかれないよう慎重にふたりを尾行する。

「逃げられたか……」

 足を止めたニコラウスが、入り組んだ路地を見回した。
 土地に馴染めない新参者ほど、不便な区画に追いやられるものだ。にもかかわらずフードの男たちの足取りは、あまりにも迷いが見られなかった。

「なぁ、デル。あのしゃべり方、オレめっちゃ聞き覚えあるんだけど」
「奇遇ですね、先輩。実はオレもです」

 男たちの会話はかなり独特のイントネーションがあった。あんな感じで話す人間を、カイはひとりだけ知っている。

(――ランプレヒト)

 バルバナスの小姓であり、騎士団のお抱え薬師をしている人物だ。とても小柄で、いくつになっても少年のように見える不思議な容姿の男だった。

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