嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
◇
迎えた舞踏会当日。
辺境伯夫人の誕生日の祝いで招待されたが、思っていたよりもアットホームな雰囲気だ。見知った者も多くいて、ルチアはほっと胸をなでおろした。
広間には騎士が幾人もいて、その中にカイの姿もあった。
怪しまれるような態度をとってはいけないと、ルチアは努めてカイのいる方を見ないようにしていた。
「どうかしたか? ブルーメ嬢」
「い、いえ、なんでもないです」
横に立つエーミールに慌てて首を振る。騎士服姿の端正な顔と目が合って、居心地悪くなったルチアは思わず顔を逸らした。
「すみません、今日はわたくしなんかの相手をさせてしまって」
「そんなことは気にしなくていい」
「でも……」
社交界に疎いルチアでさえ、彼の気を引きたい女性が山ほどいることくらいは知っている。
それでなくともエーミールは侯爵家の人間だ。子爵令嬢のルチアなど、本来なら相手にもされないことだろう。
「安心してくれ、ジークヴァルト様の仰せだ。今日は責任をもってブルーメ嬢をエスコートしよう」
「さすが社交界きってのモテ男っすね」
「ニコラウスか……こんな席でくだらないことを言うな」
突然話しかけてきたたれ目の騎士を、エーミールは心底嫌そうに睨みつけた。対するニコラウスは人の良さそうな笑顔を浮かべている。
ニコラウスは暴言令嬢イザベラの兄だ。彼女そっくりな目元を見れば、名乗られずとも血のつながりがあるのは分かってしまう。
「エーミール様、そちらのご令嬢をオレにも紹介してくださいよ」
ニコラウスにじっと見つめられ、ルチアはとっさに顔を俯かせた。
この声はなんだか聞き覚えがある。嫌な予感がして、ルチアの視線が不自然に床の上をさまよった。
「ああ、ブルーメ嬢。この男はニコラウス・ブラル、伯爵家の人間だ」
「はじめまして、ブラル様。ルチアと申します。イザベラ様にはいつもよくしていただいております」
「イザベラが?」
迎えた舞踏会当日。
辺境伯夫人の誕生日の祝いで招待されたが、思っていたよりもアットホームな雰囲気だ。見知った者も多くいて、ルチアはほっと胸をなでおろした。
広間には騎士が幾人もいて、その中にカイの姿もあった。
怪しまれるような態度をとってはいけないと、ルチアは努めてカイのいる方を見ないようにしていた。
「どうかしたか? ブルーメ嬢」
「い、いえ、なんでもないです」
横に立つエーミールに慌てて首を振る。騎士服姿の端正な顔と目が合って、居心地悪くなったルチアは思わず顔を逸らした。
「すみません、今日はわたくしなんかの相手をさせてしまって」
「そんなことは気にしなくていい」
「でも……」
社交界に疎いルチアでさえ、彼の気を引きたい女性が山ほどいることくらいは知っている。
それでなくともエーミールは侯爵家の人間だ。子爵令嬢のルチアなど、本来なら相手にもされないことだろう。
「安心してくれ、ジークヴァルト様の仰せだ。今日は責任をもってブルーメ嬢をエスコートしよう」
「さすが社交界きってのモテ男っすね」
「ニコラウスか……こんな席でくだらないことを言うな」
突然話しかけてきたたれ目の騎士を、エーミールは心底嫌そうに睨みつけた。対するニコラウスは人の良さそうな笑顔を浮かべている。
ニコラウスは暴言令嬢イザベラの兄だ。彼女そっくりな目元を見れば、名乗られずとも血のつながりがあるのは分かってしまう。
「エーミール様、そちらのご令嬢をオレにも紹介してくださいよ」
ニコラウスにじっと見つめられ、ルチアはとっさに顔を俯かせた。
この声はなんだか聞き覚えがある。嫌な予感がして、ルチアの視線が不自然に床の上をさまよった。
「ああ、ブルーメ嬢。この男はニコラウス・ブラル、伯爵家の人間だ」
「はじめまして、ブラル様。ルチアと申します。イザベラ様にはいつもよくしていただいております」
「イザベラが?」