嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「ああ、まぁ、それはそうっすね……」

 歯切れ悪く答えたニコラウスは、すまなそうに頭をかいた。

 エーミールが言っているのは、ルチアがバルバナスと似た瞳と髪色をしているということだ。
 ルチアは王族の落とし(だね)ではないのかと、そんな噂が社交界で流れている。そのことにルチア自身も気づき始めていた。

 自分が王族の血を引いているなど、すんなりと受け入れられるはずもない。だが後宮で会った王妹ピッパが、ルチアと似ていたこともまた事実だった。

 ――バルバナスが自分の父親であるのかもしれない。

 一時はその考えがよぎったが、当のバルバナスはルチアを気に掛ける様子もない。リーゼロッテの結婚式で初めて会ったときにも、まるで興味を示されなかった。

(あの怖そうなひとがわたしの父さんの筈はないわ)

 なによりも母アニサが愛した人間が、あんな男だとは思いたくなかった。

「その、ブルーメ嬢……なんて言うか、困らせて悪かった」
「いえ、わたくしは別に」
「迷惑ついでと言ったらなんなんだが、イザベラのこと、これからもよろしく頼むな?」
「それはもちろん。お世話になってるのはむしろわたくしの方ですし」 
「そう言ってもらえるとオレも助かるよ。懇意にしてた令嬢が次々と嫁ぎ先を決めてくもんだから、イザベラやつ会うと当たりがきつくってな。おっと、これは聞かなかったことにしといてくれ」

 おどけて言うニコラウスに、ルチアは素直に頷き返した。婚約者に裏切られたイザベラは、今社交界で嘲笑の的になっている。
 一度立った噂は電光石火で広がっていく。それもあることないことが、面白おかしく盛り付けにされて。

(わたしたちも気をつけなくちゃ)

 カイとの秘密がバレでもしたら、きっと二度と会わせてもらえなくなる。
 醜聞の立った令嬢の末路をこれまでいくつも耳にした。大概は屋敷に閉じ込められた末に、家の体裁を保つため望まぬ結婚を強いられる。

「あちらにジークヴァルト様がいらっしゃる。ブルーメ嬢、挨拶に行こう」
「はい、グレーデン様」

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