嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
ニコラウスを置いて、エーミールとともに公爵夫妻の元に向かった。
相変わらず目立つ夫婦だ。着飾った貴族だらけの広間でも、自然と周囲の視線をくぎ付けにしている。
「ルチア様、ごきげんよう。こちらに来て顔を合わせるのは初めてね。ここ数日退屈にさせてしまったかしら」
「いえ、ベッティもいますから……」
「ならよかったわ。今日の舞踏会は気楽に楽しんでらしてね。主催のディートリンデ様もそれをお望みだから」
お手本のような淑女の笑みを浮かべたリーゼロッテを、公爵が無表情のまま半ば強引に引き寄せた。
「もう、ヴァルト様。今はルチア様とお話をしておりますのに」
可愛らしく唇を尖らせたリーゼロッテを、公爵はやはり無表情で見下ろしている。
最愛の妻の注意が余所に行くことがどうも面白くないらしい。鉄面皮で表情の読めない彼は、裏腹に嫉妬の塊であるようだ。
無言で延ばされた指先がリーゼロッテの頬に這わされていく。壊れ物に触れるようなやさしい手つきは、公爵がどれだけを彼女を大切にしているかを物語っていた。
人目を憚ることなく愛されるリーゼロッテを前に、ルチアの胸がちくりと痛んだ。いつか呼ばれた彼女の結婚式が思い出されて、心の奥に更なる影が広がっていく。
どんなに愛し合っていたとしても、ルチアがカイと並び立つことはない。誰からも祝福を受けることのない、永遠に後ろ暗い関係だ。
(それでも会えなくなるよりはマシだもの……)
懸命にそう言い聞かせた。
もうカイなしでは生きていけない。それを自覚してしまったルチアは、進むべき道を自ら決めたのだから。
無意識に視線を向けた先には、恋焦がれるカイがいた。見知らぬ夫人と談笑する姿に、思わず唇を噛みしめる。
「ルチア様?」
気づかわしげな声にはっと意識を戻した。リーゼロッテにはこの思いを知られてしまっている。
もう煩わしくカイとのことを聞かれたくはない。非難めいた視線で遠くのカイを見やっているリーゼロッテに、何かお節介をされても厄介だ。
何としてもふたりの世界を守りたくて、ルチアは静かな笑みを口元に乗せた。
相変わらず目立つ夫婦だ。着飾った貴族だらけの広間でも、自然と周囲の視線をくぎ付けにしている。
「ルチア様、ごきげんよう。こちらに来て顔を合わせるのは初めてね。ここ数日退屈にさせてしまったかしら」
「いえ、ベッティもいますから……」
「ならよかったわ。今日の舞踏会は気楽に楽しんでらしてね。主催のディートリンデ様もそれをお望みだから」
お手本のような淑女の笑みを浮かべたリーゼロッテを、公爵が無表情のまま半ば強引に引き寄せた。
「もう、ヴァルト様。今はルチア様とお話をしておりますのに」
可愛らしく唇を尖らせたリーゼロッテを、公爵はやはり無表情で見下ろしている。
最愛の妻の注意が余所に行くことがどうも面白くないらしい。鉄面皮で表情の読めない彼は、裏腹に嫉妬の塊であるようだ。
無言で延ばされた指先がリーゼロッテの頬に這わされていく。壊れ物に触れるようなやさしい手つきは、公爵がどれだけを彼女を大切にしているかを物語っていた。
人目を憚ることなく愛されるリーゼロッテを前に、ルチアの胸がちくりと痛んだ。いつか呼ばれた彼女の結婚式が思い出されて、心の奥に更なる影が広がっていく。
どんなに愛し合っていたとしても、ルチアがカイと並び立つことはない。誰からも祝福を受けることのない、永遠に後ろ暗い関係だ。
(それでも会えなくなるよりはマシだもの……)
懸命にそう言い聞かせた。
もうカイなしでは生きていけない。それを自覚してしまったルチアは、進むべき道を自ら決めたのだから。
無意識に視線を向けた先には、恋焦がれるカイがいた。見知らぬ夫人と談笑する姿に、思わず唇を噛みしめる。
「ルチア様?」
気づかわしげな声にはっと意識を戻した。リーゼロッテにはこの思いを知られてしまっている。
もう煩わしくカイとのことを聞かれたくはない。非難めいた視線で遠くのカイを見やっているリーゼロッテに、何かお節介をされても厄介だ。
何としてもふたりの世界を守りたくて、ルチアは静かな笑みを口元に乗せた。