嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 思わず声が上ずった。
 真っ昼間、しかもこんな公衆の面前だ。内緒話の近さとは言え、思い出されたあの日のあられもない醜態にリーゼロッテの頬が真っ赤に染まった。

「ど、どうして今そのような話をっ」
「酔ったお前はあのときと同じ感じだ」
「え……?」

 フリーズした頭のまま、ジークヴァルトと見つめあう。
 きっと聞き間違いだと思い直し、リーゼロッテは恐る恐る口を開いた。

「酔ったわたくしが? 媚薬を飲んだときと同じになると? ヴァルト様はそうおっしゃっているのですか?」
「ああ、そうだ」

 にべもなく返されて、あまりことにリーゼロッテは涙目で両頬を覆った。令嬢時代、ドロデロの異形に転ばされていた事実を知った以来の衝撃度だ。
 世の中には知らない方が幸せなこともある。改めてそれを思い知らされたリーゼロッテだった。

「どうした? ずっと聞きたかったのだろう?」

 耳元で意地悪く囁かれ、悔し紛れに頬をふくらました。そこを大きな手で挟まれて、唇の隙間をぷすと空気が漏れて出る。

「そんなに飲みたいのなら、今夜にでも飲ませてやる」
「け、結構ですっ。わたくしの記憶がないからって面白がるなんて酷いですわ」
「安心しろ。酒が入るとお前はすぐに寝てしまうからな」

 ふっと笑われて、それ以上文句が言えなくなった。
 どのみち粗相を働くのはリーゼロッテ自身だ。またもやジークヴァルトに完全敗北を喫し、絶対に酒は口にすまいとぐっと涙をのみ込んだ。

「姉上!」
「リーゼロッテお姉様!」

 同時に声をかけてきたのは弟のルカとツェツィーリアだった。
 婚約中のふたりの(よそお)いを見て、リーゼロッテはほっこりと微笑んだ。

「ルカ、ツェツィーリア。今日はお揃いの衣装なのね」
「はい! 今日の日のために、わたしからツェツィー様に贈らせていただきました!」
「べ、別にわたくしは着たくて着ているわけではないわ。ルカがどうしてもって言うから、仕方なく着てあげただけよ」

 つんと顔を逸らしたツェツィーリアの手を、ルカは愛おしそうに握っている。

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