嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「ツェツィー様がわたしの婚約者だとどうしても知らしめておきたいのです。お美しい貴女が誰にも取られないように」
「ななななに馬鹿なこと言ってるのよっ」
「わたしは至って真剣です」

 きりっと返されて、ツェツィーリアは真っ赤になったあと、くやしそうに再びつんと顔を逸らした。
 ルカの好き好き攻撃は、会うたびに威力が増している。ツェツィーリアには悪いが、それがとても微笑ましかった。

「あら? ルカあなた、こんな席なのに帯剣をしているの?」

 腰に下げられたひと振りの剣は、立派な鞘に収められていた。しかも大人が振るうような長剣だ。

「はい、こちらの砦は国境を守る城塞と伺いました。有事の際にはツェツィー様をわたしがお守りしなくてはと、辺境伯様から帯剣の許可をいただいたのです!」
「お姉様、この剣はレルナー家に代々伝わる宝刀なのよ」
「レルナー公爵家の? そんな大事なものをどうしてルカが……」

 リーゼロッテが首をかしげると、ツェツィーリアが自分のことのように誇らしげな顔をした。

「何百年も誰も鞘から抜くことができなかったのに、ルカったらあっさりと抜いてしまったの。そうしたら、お義父様がこの剣をルカにあげてもいいって言い出して」
「レルナー公爵様はツェツィー様をお守りするためならばと、家宝の剣をわたしに授けてくださったのです。その思いにわたしは報いねばなりません!」

 ダーミッシュ家でリーゼロッテを守っていた小さな騎士(ルカ)は、もう立派な殿方になったようだ。
 姉として寂しくも感じるが、うれしさの方が大きかった。

「それにしても抜けない剣を抜くだなんて、RPGの勇者の剣のエピソードみたいね」
「勇者の剣?」
「いいえ、なんでないの。ただの独り言よ」

 脳内突っ込みをうっかり口に出してしまい、リーゼロッテは慌ててかぶりを振った。

「違うわ。この剣は退魔の剣と言うのよ、お姉様」
「退魔の剣……またも中二病全開ね」
「ちゅうにびょう?」
「い、いいえ、ただの独り言よ。そんなことよりもふたりはダンスは踊った? まだなら行ってきてはどうかしら?」

 話題を変えるために、ダンスフロアに視線をやった。
 格式ばった王城の夜会に比べて、みな気楽に楽しんで踊っているのが見て取れる。

< 478 / 582 >

この作品をシェア

pagetop