嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 そんな中、エーミールと踊るルチアの姿が見えた。イケメン貴公子のリードに引けを取らない存在感が、今日のルチアからは感じられた。

 ――あの方のことは、もう大丈夫です

 先ほどのルチアの言葉が残像のように耳に響いた。

(今日もカイ様のお姿をさびしげに見てたけど……)

 愁いを帯びた金の瞳を思い浮かべる。年下のルチアが、色香漂う大人の女性のように見えて仕方がなかった。
 恐らくルチアはカイとのことを吹っ切ったのだろう。もしくは吹っ切ろうと努力しているところなのか。

(いつかルチア様に新しい恋が訪れますように……)

 祈るように瞳を伏せる。
 そのときダンスフロアからいっそう楽しげな歓声が広がった。

 パートナーと踊っていた貴族たちが、男女に分かれて二重の円を組んだ。向かい合わせで手を取り合って、流れ出した音楽とともに軽快なステップを踊り始める。
 演奏は同じ節が繰り返されて、踊りの輪もまたパートナーを順にずらしながら同じステップが繰り返される。
 まるで上品なフォークダンスのようだ。見たことのない踊りに、リーゼロッテは隣のジークヴァルトを仰ぎ見た。

「ヴァルト様、あちらは……?」
「あの輪舞曲(ロンド)はヴォルンアルバに昔から伝わる踊りだ」
「みな様たのしそうですわね」
「お前は駄目だ」
「どうしてですの?」

 食い気味に止めてきたジークヴァルトに不満顔を向ける。

「オレ以外と踊るのは、一回につきひとりまでだと言っただろう」
「あ……」

 確かにパートナーを変えてグルグル踊り続けると、何人もの人間と踊ることになる。

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