嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「でも踊り自体は短いですし、ちょこっとくらいなら」
「駄目だ」
「そうです、姉上。君子危うきに近寄らずですよ」
「だけどルカ、わたくし最近では異形の対策は万全なのよ?」
「いえ、そうではなくて、余計な虫がつくのはよろしくないと言う話です」

 まさかルカがジークヴァルトを擁護してくるとは。驚いたリーゼロッテの横でツェツィーリアが不満げに言い返した。

「そんなつまらない理由で、ルカはわたくしにも躍らせないでいたのね。誰とでも美しく踊れることの方が貴族にとって大事じゃない」
「まぁ本当! ツェツィーリアの言う通りですわ」

 ツェツィーリアを抱きしめたリーゼロッテが便乗すると、ジークヴァルトとルカの口が同じ動きを取った。

「絶対に駄目だ」
「絶対に駄目です」

 あまりのシンクロ率に、リーゼロッテとツェツィーリアが顔を見合わせる。
 すると背後からくすくすと笑い声が聞こえてきた。

「あなたたちの騎士(ナイト)は相変わらずのようね」
「アデライーデお姉様……」

 優雅に騎士服を着込むアデライーデは理想の男装の麗人だ。右目にはめられた眼帯は、舞踏会仕様で真っ赤な薔薇の刺繍が施されている。
 うっとりとなっていると、ジークヴァルトが嫌そうに呟いた。

「何しに来た」
「何しにって、リーゼロッテと踊る約束をしたでしょう?」

 有無を言わさずリーゼロッテをジークヴァルトから奪い取る。

「さ、行きましょうリーゼロッテ。ツェツィーリアもルカと一緒にいらっしゃい」
「ですがお姉様、このままでは他の方とも踊ることに……」
「いいでしょ、別に。ヴァルトはリーゼロッテを縛り過ぎよ」

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