嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
ルカは無知なる者なので、この異常事態は察知できないのだろう。しかし尋常ではない彼女の様子に、戸惑いながらもルカはツェツィーリアを抱き寄せた。
「ルカは絶対にツェツィーリアのそばを離れないで」
無知なる者には異形は手出しはできない。近づくことも忌避するほどなので、ルカの周囲は安全なはずだ。
しかし取り憑かれた人間となると、また話は別になってくる。物理的な攻撃で来られると、如何に無知なる者でも被害を被る可能性はあった。
(敵襲と異形の襲来が同時に起こるだなんて……)
どうにも不自然過ぎる。どこまでが仕組まれたものなのか。推しはかる術はリーゼロッテには何もなかった。
それでも今できることをするしかない。不安と恐怖に飲まれそうになりながらも、ジークヴァルトが来るまではとリーゼロッテは自身を奮い立たせた。
「ふたりとも、できるだけ奥にいて」
言いながら香水瓶のゴムを押して部屋全体に振りまいた。これはリーゼロッテの涙入りのスプレーだ。シュっとひと吹きすればあら不思議、弱い小鬼が超ご機嫌になる謎アイテムだった。
しかし清廉な空気に満たされた室内とは裏腹に、扉の向こうでは異形の者が余計に騒ぎだした。振動で扉がガタガタと揺れ、ドアノブがガチャガチャと乱暴に回され始める。
(ま、まずいわ、わたしの涙に余計に反応しちゃってるっぽい)
ツェツィーリアの言うように、異形の者がどんどんこの部屋の前に集まってきている。涙入りスプレーがそれを助長してしまったようだ。
このままでは扉が破られてしまうかもしれない。激しく軋む扉を涙目で見やりながら、リーゼロッテは探ったポケットから涙の原液入りの小瓶を取り出した。
(落ち着いて……落ち着くのよ、リーゼロッテ)
震える指で小瓶を握りしめる。
次の瞬間、ばんっと扉が乱暴に開け放たれた。ぐぉっと異形たちがなだれ込む。その熱気とも冷気ともつかない邪悪の塊に向けて、リーゼロッテは横一線に小瓶の涙を振りまいた。
涙に触れた異形の者が、絶叫とともに蒸散していく。体当たりの勢いで、リーゼロッテは扉を素早く閉めにかかった。
無我夢中で浄化の力を流すと、扉の向こうの異形の数が減っていく。しかしそれも鼬ごっこだ。どんどん集まってくる異形の気配に、リーゼロッテの緑の力が不安定に弱まっていく。
(どうしてこんなときに上手く扱えないの……!)
「ルカは絶対にツェツィーリアのそばを離れないで」
無知なる者には異形は手出しはできない。近づくことも忌避するほどなので、ルカの周囲は安全なはずだ。
しかし取り憑かれた人間となると、また話は別になってくる。物理的な攻撃で来られると、如何に無知なる者でも被害を被る可能性はあった。
(敵襲と異形の襲来が同時に起こるだなんて……)
どうにも不自然過ぎる。どこまでが仕組まれたものなのか。推しはかる術はリーゼロッテには何もなかった。
それでも今できることをするしかない。不安と恐怖に飲まれそうになりながらも、ジークヴァルトが来るまではとリーゼロッテは自身を奮い立たせた。
「ふたりとも、できるだけ奥にいて」
言いながら香水瓶のゴムを押して部屋全体に振りまいた。これはリーゼロッテの涙入りのスプレーだ。シュっとひと吹きすればあら不思議、弱い小鬼が超ご機嫌になる謎アイテムだった。
しかし清廉な空気に満たされた室内とは裏腹に、扉の向こうでは異形の者が余計に騒ぎだした。振動で扉がガタガタと揺れ、ドアノブがガチャガチャと乱暴に回され始める。
(ま、まずいわ、わたしの涙に余計に反応しちゃってるっぽい)
ツェツィーリアの言うように、異形の者がどんどんこの部屋の前に集まってきている。涙入りスプレーがそれを助長してしまったようだ。
このままでは扉が破られてしまうかもしれない。激しく軋む扉を涙目で見やりながら、リーゼロッテは探ったポケットから涙の原液入りの小瓶を取り出した。
(落ち着いて……落ち着くのよ、リーゼロッテ)
震える指で小瓶を握りしめる。
次の瞬間、ばんっと扉が乱暴に開け放たれた。ぐぉっと異形たちがなだれ込む。その熱気とも冷気ともつかない邪悪の塊に向けて、リーゼロッテは横一線に小瓶の涙を振りまいた。
涙に触れた異形の者が、絶叫とともに蒸散していく。体当たりの勢いで、リーゼロッテは扉を素早く閉めにかかった。
無我夢中で浄化の力を流すと、扉の向こうの異形の数が減っていく。しかしそれも鼬ごっこだ。どんどん集まってくる異形の気配に、リーゼロッテの緑の力が不安定に弱まっていく。
(どうしてこんなときに上手く扱えないの……!)