嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
「あなたたちは鍵をかけて絶対に外に出ないこと。いいわね?」

 強く言い含め、アデライーデはリーゼロッテたちを残し部屋を出た。
 施錠音を確認し、すぐさま広間を目指す。大方の招待客は安全な場所へと誘導できたはずだ。残っているとすれば事態を把握できていない酔っぱらいくらいのものだろう。

(ったく、何だって言うのよ、もう!)

 隣国の手の者がこの地に入り込んでいる話は聞いていた。しかし何も今日この日を選んで攻め込まなくてもいいではないか。母親の祝いの席に水を差され、抑えようのない苛立ちが湧き上がる。

「いいわよ、この砦に来たことを骨の髄まで後悔させてあげるわ」
「はは、これは心強いお言葉ですね」

 出くわしたのはカイだった。軽口を叩いているが、アデライーデ同様周囲に隙なく警戒を向けている。

「戦況をお伺いしても?」
「お父様の指揮で敵陣は砦の西の一角に追い詰めたわ。招待客は安全な東側に。カイも誰か見つけたらそちらに誘導して」
「承知しました」
「あなたは酔ってないようね?」
「まぁ、言っても任務中でしたし」
「騎士の(かがみ)ね。ニコなんか舞踏会に浮かれてへべれけよ」

 使えないったらありゃしない。舌打ちと共にそう付け加えたとき、一気に全身が総毛立った。

「この気配は――」

 覚えのある紅の瘴気に、アデライーデは来た廊下を振り返った。
 そこかしこにいた弱い異形たちが一斉にざわつき始める。ある者は怯え、ある者は殺気立つ。伝播するようにその混乱がどんどん広がっていくのが感じ取れた。

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