嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「どうしてこんなときに」
「星を堕とす者……」
アデライーデの舌打ちと同時に、カイの口から呟きが漏れる。
この禍々しい気配を放つ禁忌の異形は、幾度もリーゼロッテを狙ってきた。今すぐ引き返すべきだろうか。
しかし自分が行くよりもジークヴァルトを向かわせた方が話が早い。リーゼロッテの安全確保ためにも、アデライーデは広間へ向かうことを瞬時に決めた。
バルバナスと早急に合流し、指示を仰がなくてはならない。紅の異形に対処するか、敵国との戦闘に加わるか。騎士団の一員として独断で行動するわけにはいかなかった。
「アデライーデ様、オレは招待客の様子を見てきます」
「そうしてもらえると助かるわ。わたしはバルバナス様のもとに戻るから」
招待客の対応には母ディートリンデが当たっている。大勢の砦の兵士が護衛についてはいるが、この異形の騒ぎにどうしても胸騒ぎ覚えた。
カイと別れ、アデライーデは広間へと駆け込んだ。あれほど賑やかだった舞踏会は見る影もない。
入るなり何やら口論が聞こえてくる。閑散としたフロアの片隅で、バルバナスがジークヴァルトの腕を半ばねじり上げて乱暴に掴んでいた。
無言で殺気を孕みつつ、それでもジークヴァルトはバルバナスの手を振り解くことができないでいる様子だ。
そんなジークヴァルトをバルバナスはどこにも行かせまいとしている。それを父ジークフリートが見咎めているようだった。
「駄目だ、ジークヴァルト、お前も騎士団とともに戦闘に加われ」
「いや、いい。ヴァルトはすぐにリーゼロッテの元に向かうんだ」
「ああん? オレの命令に逆らおうってのか?」
「お言葉ですが、ここで全ての権限を委ねられているのは辺境伯であるこのわたしです。いかに大公の命令だとしても、我々に従う義務はありません」
「なんだと?」
「バルバナス様、落ち着いて!」
「星を堕とす者……」
アデライーデの舌打ちと同時に、カイの口から呟きが漏れる。
この禍々しい気配を放つ禁忌の異形は、幾度もリーゼロッテを狙ってきた。今すぐ引き返すべきだろうか。
しかし自分が行くよりもジークヴァルトを向かわせた方が話が早い。リーゼロッテの安全確保ためにも、アデライーデは広間へ向かうことを瞬時に決めた。
バルバナスと早急に合流し、指示を仰がなくてはならない。紅の異形に対処するか、敵国との戦闘に加わるか。騎士団の一員として独断で行動するわけにはいかなかった。
「アデライーデ様、オレは招待客の様子を見てきます」
「そうしてもらえると助かるわ。わたしはバルバナス様のもとに戻るから」
招待客の対応には母ディートリンデが当たっている。大勢の砦の兵士が護衛についてはいるが、この異形の騒ぎにどうしても胸騒ぎ覚えた。
カイと別れ、アデライーデは広間へと駆け込んだ。あれほど賑やかだった舞踏会は見る影もない。
入るなり何やら口論が聞こえてくる。閑散としたフロアの片隅で、バルバナスがジークヴァルトの腕を半ばねじり上げて乱暴に掴んでいた。
無言で殺気を孕みつつ、それでもジークヴァルトはバルバナスの手を振り解くことができないでいる様子だ。
そんなジークヴァルトをバルバナスはどこにも行かせまいとしている。それを父ジークフリートが見咎めているようだった。
「駄目だ、ジークヴァルト、お前も騎士団とともに戦闘に加われ」
「いや、いい。ヴァルトはすぐにリーゼロッテの元に向かうんだ」
「ああん? オレの命令に逆らおうってのか?」
「お言葉ですが、ここで全ての権限を委ねられているのは辺境伯であるこのわたしです。いかに大公の命令だとしても、我々に従う義務はありません」
「なんだと?」
「バルバナス様、落ち着いて!」