嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 対峙するは星を堕とす者――龍から罪の烙印を受けし禁忌の異形だ。直接相まみえるのは幾度目だろうか。この異形には何度も辛酸を舐めさせられた。
 託宣を受けた人間を害する行為は青龍への反逆とみなされる。星を堕とす者とはそんな愚行を犯し、龍に鉄槌を受けた者の哀れな末路だ。
 その存在がなぜか執拗にリーゼロッテを狙ってくる。理由はどうあれ、これ以上危険な目に合わせるわけにはいかなかった。
 全てを終わらせるため、ジークヴァルトは女に本気の殺意を向けた。

「ここで決着をつけてやる」

 動きを見せない女に、先制で攻撃を仕掛けていく。
 容赦せず初めから全力で叩き込んだ。女は腕のみでそれを受け止め、斜め上へと弾き飛ばした。
 間髪置かずに二撃三撃と繰り出すと、軽くいなされていた青の力が女の片腕をもぐように切り離した。
 ゆらっと陽炎(かげろう)が立ち昇り、失われたはずの腕が瞬くうちに再生される。舌打ちとともに連続で斬撃を撃ち放った。衝撃で揺れる女の肢体に、無数の穴が穿たれていく。
 倒れそうで倒れない。不気味な様相のまま、女はゆらりゆらりと近づいてくる。
 いくら抉り取られようとも、女の肢体は再生を繰り返す。(いたち)ごっこの状態に、それでもジークヴァルトは決して手を緩めなかった。

『ねぇ、ヴァルト』

 横で浮いていたジークハルトが、のんびりと口を開いた。あぐらの体を揺らす様子は、緊張感のかけらもない。

『今更だけど、どれだけやっても彼女は祓えないからね?』
「だからなんだ!」
『なんだって言われても。彼女も龍に選ばれし者のひとりだし?』
「龍に選ばれし? 一体どういう……」
『言葉通りだよ。この世界にとって彼女は必要不可欠……とても貴重な存在だ』

 意味不明な謎かけに眉を顰めるも、ジークヴァルトに問い返す時間は与えられなかった。
 狂気に満ちた瞳で紅の女が手をかざしてくる。そうはさせじとジークヴァルトはその手元に向かって力を打ち放った。
 ほんの一瞬間に合わず、放たれた紅と青とがすれ違いざま交差する。
 直撃を受けた女の腕が、肩ごとごっそり抉り取られた。
 にぃっと紅い唇が弧を描き、ジークヴァルトを大きく逸れた瘴気の塊がリーゼロッテ目がけて回り込む。

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