嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「きゃぁあ!」
「リーゼロッテっ」

 しかしその軌道はさらに曲げられ、リーゼロッテの脇をすり抜けようとした。
 その先にはルチアがいる。はっとしたリーゼロッテが後方を振り返った。

「いけない……!」

 ジークヴァルトが制止する間もなく、リーゼロッテは青の守りの円陣から飛び出していた。瘴気の前に立ちはだかって、その前進を食い止める。
 助けに入ろうとしたジークヴァルトの行く手を、無数のかまいたちが乱舞した。
 その間にもリーゼロッテへの攻撃が激化していく。今にも押し潰されそうなリーゼロッテに苦悶の表情が浮かび上がった。
 虚ろな瞳のルチアはいまだ床にへたり込んでいる。そのそばでベッティが、紅い穢れの流れ弾を必死の形相で祓い退けていた。

「ベッティ! 今のうちにルチア様をもっと安全な場所に連れて行って……!」
「う、ぁ、でもぉ、逃げるならリーゼロッテ様もご一緒にぃ」

 殺気立つジークヴァルトを気にしてか、ベッティは躊躇したまま動かない。

「お願いだから、早くっ」

 切羽詰まった声に、意を決したようにベッティはルチアの腕を引っ張り上げた。

「公爵様ぁ、リーゼロッテ様のお達しですのでぇ、どうぞ恨まないでくださいましねぇぇぇえぇ……!」

 強引にルチアを担いだベッティが、ものすごい勢いで駆け去っていく。
 その背に向かって異形の女が瘴気のかまいたちを連打した。

「どうしてルチア様ばかりを……!」
「いいからお前はこれ以上そこから動くな!」

 華奢な体を青の円へと押し戻す。同時にジークヴァルトは力をぶつけ、かまいたちをすべて相殺させた。
 ルチアたちの姿が見えなくなると、ようやく女は攻撃の手を降ろした。かと思うと全身から瘴気を放ち出し、瞬く間に辺り一帯が紅の濃霧に包まれる。
 視界が遮られる中ジークヴァルトは女の気配を探ろうとした。とそのとき、目の前の(もや)からすぅっと女の顔が浮き出した。

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