嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「どう? 愛する女の手で殺される気分は?」

 (いびつ)な笑みを浮かべ、耳障りな声が楽しげに問うてくる。
 上目遣いの瞳をぎらつかせ、リーゼロッテは剣の刃先をジークヴァルトの首筋に押し当てた。

「くくくっ、龍の盾ほどの男が(ざま)は無い。あの世でこの女を存分に呪うといい」

 短剣を握る手に力が入る。磨き上げられた切っ先が、喉元の皮膚を今まさに突き破ろうとした。

「や……めて……」

 か細い声が漏れて出る。耳慣れた声にジークヴァルトははっとなった。
 虚ろな瞳のままリーゼロッテは静かに涙を流していた。せめぎ合うように、(つか)を握る手がぶるぶると小刻みに震えている。

(うるさ)い! お前はおとなしく引っ込んでいろ!」

 短剣が横凪ぎに空を切った。
 体の自由を取り戻すと、リーゼロッテの唇が再び妖しげに弧を描く。

「そうだ……そこで指を(くわ)えて見ているといい。お前のこの手が、愛する男を死に至らしめる瞬間を」

 心底楽しげに言いながらリーゼロッテは短剣を構え直した。
 宿す魂の心根ひとつで、こんなにも器が変わるものなのか。悪鬼のごとく歪んだ顔はとてもリーゼロッテだとは思えない。

「さぁ悔やむがいい! こうなったのもすべてお前の愚かな行いのせいだ……!」

 らんらんと目を輝かせ、リーゼロッテはジークヴァルト目がけて両腕を振り上げた。

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