嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
せめぎ合いの果てで、リーゼロッテは自分の中から何か大きな塊がすっぽ抜けるのを感じた。直後、全身に青の力が吹き込まれる。
あれだけ感じていた愛憎が、今は嘘のように消え去っていた。震える指を見つめ、自分の意思で動かしてみる。
「ジーク……ヴァルト様……」
「リーゼロッテ……無事でよかった……」
力強い青の奔流が、残る女の気配をことごとく洗い流していく。
痛いくらいに抱きしめられて、リーゼロッテは耳に鼓動を聞いた。その速さにジークヴァルトの動揺を思い知る。
「なんだお前は! やめろ……やめてくれ!」
叫び声にはっとした。後退るツェーザルが、今まさに紅蓮の瘴気に包まれた。
「ぐぁああぁあっ」
女に浸食されたツェーザルは、雄たけびを上げ床をのたうち回る。その様相は狂人じみて、白目をむき口からは泡を吹く。
ともすれば自分がああなっていた。ぞっとして、リーゼロッテはジークヴァルトの胸に縋りついた。
「ヴァルト様……あの方は……」
「完全に飲まれてしまっている。ああなったら手の施しようがない。もう手遅れだ」
虚ろな瞳のツェーザルが、意味不明な言葉を吐きながらよろよろと立ち上がる。その姿に重なり合って、紅の女の輪郭が陽炎のごとく揺らめいた。
深紅の唇が満足そうに弧を描く。うっとりとツェーザルを抱きしめる姿は、まるで最愛の人との至福の逢瀬に見えた。
紅の女と一体になったまま、ツェーザルがふらりふらりと遠ざかる。
殺気立つ異形の者が、通り過ぎ様、次から次に瘴気へと飲み込まれていく。
進むほど、ツェーザルの纏う瘴気が肥大する。その後ろ姿を、リーゼロッテは呆然と見送った。
あれだけ感じていた愛憎が、今は嘘のように消え去っていた。震える指を見つめ、自分の意思で動かしてみる。
「ジーク……ヴァルト様……」
「リーゼロッテ……無事でよかった……」
力強い青の奔流が、残る女の気配をことごとく洗い流していく。
痛いくらいに抱きしめられて、リーゼロッテは耳に鼓動を聞いた。その速さにジークヴァルトの動揺を思い知る。
「なんだお前は! やめろ……やめてくれ!」
叫び声にはっとした。後退るツェーザルが、今まさに紅蓮の瘴気に包まれた。
「ぐぁああぁあっ」
女に浸食されたツェーザルは、雄たけびを上げ床をのたうち回る。その様相は狂人じみて、白目をむき口からは泡を吹く。
ともすれば自分がああなっていた。ぞっとして、リーゼロッテはジークヴァルトの胸に縋りついた。
「ヴァルト様……あの方は……」
「完全に飲まれてしまっている。ああなったら手の施しようがない。もう手遅れだ」
虚ろな瞳のツェーザルが、意味不明な言葉を吐きながらよろよろと立ち上がる。その姿に重なり合って、紅の女の輪郭が陽炎のごとく揺らめいた。
深紅の唇が満足そうに弧を描く。うっとりとツェーザルを抱きしめる姿は、まるで最愛の人との至福の逢瀬に見えた。
紅の女と一体になったまま、ツェーザルがふらりふらりと遠ざかる。
殺気立つ異形の者が、通り過ぎ様、次から次に瘴気へと飲み込まれていく。
進むほど、ツェーザルの纏う瘴気が肥大する。その後ろ姿を、リーゼロッテは呆然と見送った。