嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「ルチア様ぁ、よぉく聞いてくださいましねぇ。異形の者に惹かれるのはぁ、ルチア様が異形と同じ後ろ暗いお考えをお持ちってことなんですよぅ」
「何よそれ。わたしが駄目な人間だって言いたいの?」
「そういうわけではありませんがぁ……人間なら誰しも嫌な面のふたつやみっつや四つや五つぅ、そのくらいは軽く持ってますからねぇ」

 気分を害した様子のルチアだったが、なぜかじっとベッティの顔を伺ってくる。

「……リーゼロッテ様も?」

 しばしの躊躇のあと、ルチアが口にしたのはそんな言葉だった。少し考え込んでから、ベッティはにっこりと笑顔を作った。

「そりゃあもお、リーゼロッテ様だってそんな面はお持ちですよぅ。侍女としてお世話したこともあるベッティが言うから間違いないですぅ」

 言っても、胸が小さいことをコンプレックスに思っているとかそんな程度のことだ。彼女の人の良さは規格外だと何度も思い知らされているベッティだった。

「とにかくぅ、異形の者につけ入る隙を与えたら危険ってことですからぁ。あの方のためにもぉ、十分気をつけてくださいませねぇ」
「分かった、気をつける」

 ルチアは素直に頷いた。とりあえずカイの存在をちらつかせておけば、すぐに引き下がるので最近のルチアはとても扱いやすい。

「そんなことより急いで東側に避難しないとですぅ。異形だけじゃなく今、賊も侵入しててぇ……」

 はっと廊下の奥を見やると、ベッティは遠く耳をそばだてた。
 複数人の足音がする。あまりよろしくない気配とともに、それはこちらに近づきつつあった。

(これは鉢合わせしたら厄介ですねぇ……)

 しかしそちらへ行かないことには東の避難所にはたどり着けない。砦の間取りを完璧に頭に入れているベッティには、それが良く分かっていた。
 あとは西側に向かうかだ。戦いの最前線に行くことになるが、騎士団がいる分まだ安全と言えるかもしれない。
 幸い西方面に禍々しい気配はなかった。瞬時に判断すると、ベッティはルチアの手を取った。

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