嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「ここは危険ですのでぇ、さっさと行きますよぅ」
「ちょっ……ベッティっ」

 もつれる足のルチアを無理やりに引っ張っていく。
 思ったよりも気配が近づくのが早い。このままでは騎士団に保護される前に追いつかれてしまいそうだ。

「ねぇ、賊って何なの?」
「詳しいことは聞かされてませんがぁ、どうやら隣国からの侵入者のようですよぅ」

 そこまで言って、ベッティはちぃっと舌打ちをした。
 後ろ手にルチアを庇い、目視できる場所まで来ている男たちを振り返る。服装からして異国の人間のようだ。しかも全員が異形の気配を身に纏っていた。

「厄介この上ないですねぇ」
「な、何、ベッティ」
「ルチア様は下がっててくださいましぃ」

 突然立ち止まったベッティに戸惑うも、ルチアは青ざめて胸に強く小鬼を抱いた。
 男たちは剣を帯び、足取りは酔っているかのようにおぼつかない。近づくほどにその表情に息を飲んだ。虚ろな目は一様にどこか明後日を向いている。
 中には不気味に笑いを漏らしている者もいて、どの男も正気を保っているようには見えなかった。

「異形の者に取り憑かれるとぉ、ルチア様もああなるって覚えといてくださいませねぇ!」

 先手必勝とばかりに、男たちの元へ突っ込んだ。
 まずはひとり目。眠り針を吹きながら、短剣で手元を狙う。手落とされた男の剣を廊下の遠くに蹴り飛ばした。
 襲い来たふたり目の足をスライディングで引っかける。よろけた体にすかさず眠り針を打ち込んだ。

「きゃあぁっ」

 その隙に残りの男がルチアに迫ろうとする。素早く態勢を整え、ベッティは男の背に短剣を突き立てた。

「お前の相手はこっちですよぅ」

 振り返りざまの男が力任せにベッティを殴りにかかる。吹き飛ばされつつもなんとか急所は腕で庇った。
 すぐさま迎撃の姿勢を取り、眠り針を撃つ隙を伺った。短剣は男の背に刺さったままだ。
 屈強な戦士相手に肉弾戦は避けたいところだ。だが武器を失ったベッティに、それ以外取れる道はない。

< 530 / 595 >

この作品をシェア

pagetop