嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
(眠り針も残りわずかですしぃ)

 しかも催眠効果はそう長く続かない。全員一気に眠らせて、さっさとこの場を離れるのがいちばん賢いやり方だ。

「ベッティ……!」

 悲鳴交じりに呼ばれ、ベッティは再び舌打ちをした。
 先に眠らせた男が不自然な動きで立ち上がろうとしている。意識のない状態で、異形の者に操られているのが見て取れた。
 ああなってしまったら、例え男を殺したとしても死体が異形に操られるだけだ。

「万事休すってところですかねぇ」

 そう漏らしている間に、ほかの昏倒していた男もゆらりと立ち上がる。
 不幸中の幸いなのは、憑いている異形が紅の瘴気に感化され狂暴化した雑魚だと言うことだ。

(だとすればぁ、わたしが囮になればルチア様だけでも逃せるはずぅ)

 とり囲むように迫る男たちに向かって、ベッティは迷わず駆け出した。

「ルチア様は今のうちに行ってくださいましぃ!」
「で、でも」
「いいから早くぅ! 真っすぐ行けば騎士団がいると思うのでぇ、先に行って助けを呼んできてもらえるとベッティも助かりますよぅ」
「わ、分かったわ。すぐに呼んでくる!」

 小鬼を胸にルチアは駆けだした。無事遠ざかる気配に安堵する。

「何があってもここは通しませんよぅ」

 ルチアを追おうとする男たちに、ベッティは両手を広げ立ちはだかった。


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