嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「そういやおばばに、星読みに媚を売れって言われたっけか……」

 二輪の車に乗った、風変わりな老齢の女神官の言葉だ。あれは実はこのことだったのでは。
 自分の妙ちくりんな考えがやけに腑に落ちたカイだった。

「何か言ったか?」
「ううん、何でもないよ。ただの独り言。そんなことより早く行こう」
「ああ、異形もそうだが、まだ隣国の兵も潜んでいるかもしれない」

 エーミールは神妙に頷いた。
 しばらく会話もなく進んだが、見つかるのは怯え殺気立つ弱い異形の者ばかりだ。

「忌み児……ブルーメ嬢は本当に王族の落とし(だね)なのか?」
「それをオレに聞く? どうしても知りたかったらディートリヒ様あたりに直接聞いてみたら?」
「そ、そんなこと聞けるわけないだろう」

 ディートリヒが王位に就いている間にできた不義の子だと、貴族の間では噂されている。
 バルバナスの娘だと言う意見もあったが、女嫌いで有名なこともありその線は薄いというのが大多数の見方だった。

「聞けないってことは、グレーデン殿もディートリヒ様の子供って思ってるんだ?」
「違う、そういう訳じゃない」

 慌てた様子に、カイはふっと笑いをもらした。相変わらずエーミールは嘘がつけない性分のようだ。

「随分と余裕だな。ブルーメ嬢を心配してたんじゃないのか?」
「そりゃしてるけど。ま、ベッティもついてるしね」
「ベッティ……あのふざけた侍女か……」

 何かを思い出したように、エーミールは眉間にしわを寄せた。

「ああ見えてベッティは有能だよ?」
「それは知っている。神殿の件もあったからな」

 リーゼロッテ奪還の騒ぎが遠い昔のことのようだ。
 あのころはルチアもただの保護対象だったと、カイは知らず口元に笑みを浮かべた。

「ああ、そうだ、グレーデン殿」
「なんだ?」
「ベッティって実はオレの妹なんだよね」
「妹だと!? 何をふざけたことを」
「別にふざけてないって。腹違いだけど、本名エリザベスでデルプフェルト家の家系図にも載ってるし」

 これは裏社会に通じる人間には割と知られている情報だった。
 アデライーデも知っているし、エーミールの叔父ユリウスあたりも知っているはずだ。

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