嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
◇
冷ややかな石造りの廊下を息を切らして走る。
走りづらい靴はとうに脱ぎ捨てた。
(早くしないとベッティがあいつらに!)
不安のあまり振り向くと、もうベッティの姿は見えなくなっていた。
「あっ!」
長いドレスの裾に躓き膝をついた。
手のひらを擦りむいたルチアを、心配そうに小鬼が覗き込んでくる。
「これくらい大丈夫よ。それよりも早く行かなくちゃ……」
息が上がる中、顔を上げどうにか立ち上がった。
ふらつく一歩を踏み出すと、すぐ先の壁がいきなり轟音を立てて崩れ落ちた。
「な、なにっ」
恐怖で小鬼を強く抱きしめる。
砂煙が舞う瓦礫の合間に人影が見えた。その人物はゆっくりと姿を現してくる。
「ひっ!」
目の前に立ったのはひとりの男だった。虚ろな目は明後日の方を向き、泡を吹く口元からは不気味な笑い声を漏らしている。
しかも男は先ほど見た紅い光を全身に纏っていた。あの光は異形の者の本体だ。ベッティの言葉が頭に響き、ルチアは恐怖で後退った。
片手に長剣を引きずって、男はゆらりゆらりと歩を進めて来る。
「やだ、来ないで!」
逃げ場を失い壁に追い詰められた。
恐怖もあってか、煌々と輝く紅はさっきほどは美しく感じない。幻想的に揺らめく紅蓮に、それでもルチアは目を奪われた。
(駄目よ!)
魅入られそうになり、慌てて視線を逸らした。取り憑かれるとこの男のようになってしまう。
あんなひどい有様になってたまるものかと、ルチアは必死に自分を保とうとした。
冷ややかな石造りの廊下を息を切らして走る。
走りづらい靴はとうに脱ぎ捨てた。
(早くしないとベッティがあいつらに!)
不安のあまり振り向くと、もうベッティの姿は見えなくなっていた。
「あっ!」
長いドレスの裾に躓き膝をついた。
手のひらを擦りむいたルチアを、心配そうに小鬼が覗き込んでくる。
「これくらい大丈夫よ。それよりも早く行かなくちゃ……」
息が上がる中、顔を上げどうにか立ち上がった。
ふらつく一歩を踏み出すと、すぐ先の壁がいきなり轟音を立てて崩れ落ちた。
「な、なにっ」
恐怖で小鬼を強く抱きしめる。
砂煙が舞う瓦礫の合間に人影が見えた。その人物はゆっくりと姿を現してくる。
「ひっ!」
目の前に立ったのはひとりの男だった。虚ろな目は明後日の方を向き、泡を吹く口元からは不気味な笑い声を漏らしている。
しかも男は先ほど見た紅い光を全身に纏っていた。あの光は異形の者の本体だ。ベッティの言葉が頭に響き、ルチアは恐怖で後退った。
片手に長剣を引きずって、男はゆらりゆらりと歩を進めて来る。
「やだ、来ないで!」
逃げ場を失い壁に追い詰められた。
恐怖もあってか、煌々と輝く紅はさっきほどは美しく感じない。幻想的に揺らめく紅蓮に、それでもルチアは目を奪われた。
(駄目よ!)
魅入られそうになり、慌てて視線を逸らした。取り憑かれるとこの男のようになってしまう。
あんなひどい有様になってたまるものかと、ルチアは必死に自分を保とうとした。