嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「な、ゼ、目を背けル……? オ……マエに、は、コの輝きガふさわ、シい……」

 しゃがれ声で、男が一歩また一歩と近づいて来る。

「本当はオマ、エも分かっテい……るんダ、ろう? 幸セそうなヤつら、を妬む気、持ちヲ……押さエ、らレな、い自分に……」
「知らない! そんなことない……!」

 それ以上聞きたくなくて、ルチアは思わず耳を塞いだ。
 紅く光る男の手がこちらに向けて延ばされる。その輝きが美しいと思ってしまう自分に恐怖した。

「ひとツにな……れバ、楽にナる……早ク、我が力に……」
「触らないで!」

 首に触れそうになった手が、小鬼の叫びとともに弾かれる。
 男の前に躍り出た小鬼は、一瞬で紅の輝きに飲み込まれた。

「いやぁ! だめっ、やめて……!」

 輝きの中で、小鬼が苦しみ悶えている。そんな姿もすぐに溶けて視えなくなった。

「うそ、うそよ」

 呆然と唇が戦慄(わなな)いた。涙が溢れだした瞳はすぐに怒りの炎を灯す。
 その強い怨嗟を前に、皮肉にも紅の輝きは強さを増した。正気を手放したはずの男の唇が、にぃっと形よく弧を描く。

 湧き上がる怒りに任せ、ルチアは迫りくる男の顔を金の瞳で睨み上げた。


< 537 / 595 >

この作品をシェア

pagetop