嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
拳とともに、浄化の力を容赦なく鳩尾に叩き込む。物理的な攻撃と相まって男は瓦礫の中へ吹き飛んだ。
「お待たせ、ルチア」
「カイ……」
震える指がカイのシャツの背を掴んだ。大粒の涙がルチアの瞳にあふれ出す。
そのとき男がゆらりと身を起こした。片腕が明後日の方向を向いている。それでも白目をむいた男は、マリオネットのような歪な動きでその場を立ち上がった。
「はは、目の前で見るとこりゃまた迫力だな」
「あの子もあいつに……わたしを庇ったばっかりに……」
嗚咽交じりにルチアは唇を噛みしめた。
近くで怯えていた弱い異形が引き寄せられて、見る間に紅の瘴気に飲み込まれていく。
小さな断末魔の叫びはあっという間に怨嗟の呻きに変わった。肥大した負の集合体が蠢く様は、視る者の精神をも蝕んでいく。
「……ユルセナイ」
「ルチア!」
闇に同調しかけたルチアの頭を引き寄せる。至近距離で上向かせ、カイはルチアの瞳を真っすぐに見た。
「ルチア、オレは誰?」
「……カイ」
「そう、その調子。ルチアはずっとオレだけを見て」
「うん……分かった」
「よし、いい子だね」
口元に笑みを刻むと、触れていた鮮やかな赤毛から手を離した。
振り返り、近づく男に対峙する。
「ルチアは下がってて」
片腕をぶらぶらさせながら、男は剣を振り上げた。とっさに抜いた剣でそれを受けとめる。
想像以上の重い斬撃に、カイは剣を取り落としそうになった。腰を落として衝撃を逃がす。なんとか間合いを取るも、男は折れた腕を伸ばして手のひらをこちらに向けてきた。
男の腕と重なるように、紅の異形が手を伸ばしている。みるみるうちにその手の内に紅い瘴気が集まった。
最大限に濃縮された穢れが放たれる。カイを狙ったかに見えたかまいたちは、わずかにその軌道がずれた。
「お待たせ、ルチア」
「カイ……」
震える指がカイのシャツの背を掴んだ。大粒の涙がルチアの瞳にあふれ出す。
そのとき男がゆらりと身を起こした。片腕が明後日の方向を向いている。それでも白目をむいた男は、マリオネットのような歪な動きでその場を立ち上がった。
「はは、目の前で見るとこりゃまた迫力だな」
「あの子もあいつに……わたしを庇ったばっかりに……」
嗚咽交じりにルチアは唇を噛みしめた。
近くで怯えていた弱い異形が引き寄せられて、見る間に紅の瘴気に飲み込まれていく。
小さな断末魔の叫びはあっという間に怨嗟の呻きに変わった。肥大した負の集合体が蠢く様は、視る者の精神をも蝕んでいく。
「……ユルセナイ」
「ルチア!」
闇に同調しかけたルチアの頭を引き寄せる。至近距離で上向かせ、カイはルチアの瞳を真っすぐに見た。
「ルチア、オレは誰?」
「……カイ」
「そう、その調子。ルチアはずっとオレだけを見て」
「うん……分かった」
「よし、いい子だね」
口元に笑みを刻むと、触れていた鮮やかな赤毛から手を離した。
振り返り、近づく男に対峙する。
「ルチアは下がってて」
片腕をぶらぶらさせながら、男は剣を振り上げた。とっさに抜いた剣でそれを受けとめる。
想像以上の重い斬撃に、カイは剣を取り落としそうになった。腰を落として衝撃を逃がす。なんとか間合いを取るも、男は折れた腕を伸ばして手のひらをこちらに向けてきた。
男の腕と重なるように、紅の異形が手を伸ばしている。みるみるうちにその手の内に紅い瘴気が集まった。
最大限に濃縮された穢れが放たれる。カイを狙ったかに見えたかまいたちは、わずかにその軌道がずれた。