嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「まずい……!」
「きゃあぁっ」

 咄嗟にルチアを抱え床の上を転がった。
 二撃目を感じて、不安定な体勢のルチアを庇ったまま柱の影に移動する。

「そこにいて!」
「カイ!」

 なおもルチアを狙う男の懐に飛び込んだ。瘴気で焼き付きそうな肺も厭わずに、カイは男の腹に拳を叩きこんだ。
 反動で倒れかけた体が起き上がりこぼしのようにゆらりと戻る。

「おとなしくっ、倒れてっ、くれよっ!」

 続けざまに攻撃を繰り出した。禁忌の異形を祓うことはカイの力では不可能だ。だったら操り人形を壊すしかない。
 踊るように弾かれて、男は一歩一歩と後退していく。瓦礫の手前まで追い詰めると、カイは最後の賭けに出た。

(こんくらいで倒壊すんなよ)

 動き回る合間に、穴が開いた壁の周囲に起爆剤を取りつけた。あとはこの男を押し込んで、スイッチオンで崩れる壁に埋もれてもらうだけだ。
 砦の強度を信じながら、カイは男の肩を押そうとした。

「なっ――……!」

 瞬間、腹部に衝撃を受ける。無意識に男との隙間に視線を落とした。
 脇腹に剣が刺さっている。それが分かっても、カイは男を渾身の力で突き飛ばした。
 すかさず起きた爆発に、轟音を立て壁が崩れ落ちていく。砂塵が巻きあがる中、男の姿は瓦礫に埋もれて見えなくなった。

(やったのか……?)

 腹に残された剣をカイは自ら引き抜いた。血しぶきを飛ばしながら、打ち捨てられた剣が床の上を滑っていく。
 傷口を強く押さえるも、指の隙間から血が滴り落ちる。

「ぐぅっ」
「カイ……!」

 ふらりとなったカイにルチアが駆け寄った。
 ルチアを支えにしながら、カイは細い手首を掴んでその右腕の袖をたくし上げた。
 二の腕にあったはずのルチアの龍のあざが消えている。

< 540 / 595 >

この作品をシェア

pagetop