嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「はは、やった」

 痛みをこらえ、カイはかすれ声で笑った。
 ひとつ目の託宣は破られた。これでもうルチアが異形に命を狙われることはない。

「カイ、しっかりして……!」

 背に手を回してルチアがカイを抱きとめようとする。重みを支えきれず、ふたりは崩れ落ちるように座り込んだ。
 ルチアの膝に顔をうずめ、カイは震える手でスカートをまくり上げた。太ももの内側にあるあざを確かめる。
 そこには未だ龍のあざが残されていた。血のついた指であざをなぞってから、カイはそれにそっと口づけた。
 そうするだけで体が耐え難い熱を持つ。ルチアとつながった証が、今はただ愛おしくて仕方がなかった。

「うっ」

 呻き声を上げカイは体を仰向けた。ルチアの膝に頭を乗せた状態で激痛に思わず体を丸め込む。
 その間にも脇腹から流れる血が、カイの服を赤く染め上げていく。

「カイ……カイ……」

 震え声のルチアが傷に手を当ててきた。しかし一向に血が止まる様子はない。
 朦朧とする意識で見上げると、今にも泣きそうなルチアが覗き込んでいた。ルチアは確かに生きている。そう思うとじわじわと歓喜が湧き上がった。
 何百年と降ろされ続けた託宣が、今カイの手によって初めて違えられたのだ。

(ざまあみろ)

 これでルチアは龍の呪いから解き放たれる。あとはカイが星に堕ちるだけだ。
 それすらも龍の思惑通りなのか。そう思うと少々おもしろくはなかった。だがルチアの未来を守れたのだ。それだけでカイは満足だった。

 ただ、もうひとつのあざが消える瞬間をこの目で見ることは叶わない。そのことだけがカイは残念に思えた。

 ――星に堕ちるカイのためだけにある、カイを星に堕とす者

 ルチアのその証が消えるのは、カイが星に堕ちたあとだろう。

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