嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
(そう言えばルチア様、無事にブルーメ領に帰れたのかしら……)
騒ぎが大きすぎて、あのときは周囲を気に掛ける余裕もなかった。
だがそれも仕方のないことだ。ジークヴァルトに心配をかけたくなくて、何事もなく公爵領に戻るだけでリーゼロッテも精いっぱいだった。
砦の舞踏会で、最後に会ったときのルチアを思い出す。
さびしげに微笑む顔が印象的で、あの日のルチアはカイへの恋心を吹っ切ったかに見えた。
それでもルチアの視線は、無意識にカイの姿を追いかけていたようにも思う。
(そうよね……一度好きになったひとを、そう簡単に忘れるなんてできないもの)
ジークヴァルトに初恋の女がいることを知ったとき、リーゼロッテは計り知れない衝撃を受けた。
その初恋の相手が自分だったからよかったものの、あのときの胸の痛みは今でも忘れられないでいる。
最新版で侯爵家の並びを開き、なんとはなしにカイの姿を探した。
「あら……?」
「どうなさいましたか?」
「これおかしいわ。ほら、ここ。カイ様のお名前が書かれてないの」
デルプフェルト家の家系図にカイの名前が載っていない。
そこにあるのは不自然な空白だけだ。
「カイ様? デルプフェルト侯爵家にそのような名前の方はいらっしゃらないと思いましたが……」
「え? そ、そんなはずありませんわ!」
性急に昨年の貴族名鑑を引き寄せる。
そこでもデルプフェルト家のページを開いたリーゼロッテは、同じところを見て息を飲んだ。
「嘘……どうして……」
カイの名があったであろう箇所が、真っ黒く塗りつぶされていた。思わず他の場所を探すも、どこにもカイの名前は見つからない。
青ざめて、リーゼロッテはもう一年古い名鑑を本棚から取り出した。震える手つきで同じページを探す。
しかしそこも黒塗りがされていた。去年に見た時には、普通にカイの名が記されていたはずのその場所に。
騒ぎが大きすぎて、あのときは周囲を気に掛ける余裕もなかった。
だがそれも仕方のないことだ。ジークヴァルトに心配をかけたくなくて、何事もなく公爵領に戻るだけでリーゼロッテも精いっぱいだった。
砦の舞踏会で、最後に会ったときのルチアを思い出す。
さびしげに微笑む顔が印象的で、あの日のルチアはカイへの恋心を吹っ切ったかに見えた。
それでもルチアの視線は、無意識にカイの姿を追いかけていたようにも思う。
(そうよね……一度好きになったひとを、そう簡単に忘れるなんてできないもの)
ジークヴァルトに初恋の女がいることを知ったとき、リーゼロッテは計り知れない衝撃を受けた。
その初恋の相手が自分だったからよかったものの、あのときの胸の痛みは今でも忘れられないでいる。
最新版で侯爵家の並びを開き、なんとはなしにカイの姿を探した。
「あら……?」
「どうなさいましたか?」
「これおかしいわ。ほら、ここ。カイ様のお名前が書かれてないの」
デルプフェルト家の家系図にカイの名前が載っていない。
そこにあるのは不自然な空白だけだ。
「カイ様? デルプフェルト侯爵家にそのような名前の方はいらっしゃらないと思いましたが……」
「え? そ、そんなはずありませんわ!」
性急に昨年の貴族名鑑を引き寄せる。
そこでもデルプフェルト家のページを開いたリーゼロッテは、同じところを見て息を飲んだ。
「嘘……どうして……」
カイの名があったであろう箇所が、真っ黒く塗りつぶされていた。思わず他の場所を探すも、どこにもカイの名前は見つからない。
青ざめて、リーゼロッテはもう一年古い名鑑を本棚から取り出した。震える手つきで同じページを探す。
しかしそこも黒塗りがされていた。去年に見た時には、普通にカイの名が記されていたはずのその場所に。