嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 カイの声が頭に響く。
 そこから導き出された答えに、リーゼロッテはひとり絶句した。

(カイ様が……星を堕とす者になったと言うの……?)

 自分でも何を言っているのか分からない。
 だが黒塗り部分は今も目の前に存在しており、その場所以外カイの居場所はあり得なかった。

「ヴァルト様……」

 呟いて、リーゼロッテはいきなり書庫を飛び出した。
 ジークヴァルトならこの事実を否定してくれるはず。そう信じ、真っ白になった頭のまま執務室の扉を誰何(すいか)のやり取りもなしに開け放った。

「ジークヴァルト様!」
「リーゼロッテ? どうしたんだ」

 突然やってきたリーゼロッテを、驚き顔で抱きとめる。
 ジークヴァルトが仕事中なのも忘れ、リーゼロッテは泣きじゃくって胸にしがみついた。

「一体何があった?」
「見つから……いの……ぃかんに……の、名が……」

 しゃくり上げるばかりのリーゼロッテにジークヴァルトは眉根を寄せる。
 取り乱す肩を支え、リーゼロッテの顔を自分の方へと上向かせた。

「落ち着け。ちゃんと聞く。大丈夫だ、ゆっくり話せ」
「ないのです! 名鑑に、カイ様のお名前が……!」

 懸命に張り上げられた声に、ジークヴァルトが息を飲んだのが分かった。
 涙でぼやける視界の向こう、ジークヴァルトと目を見合わせる。

 青い瞳の奥にある違和感――何か後ろめたさのようなものを、敏感にリーゼロッテは感じ取った。

「……もしかして、知ってらしたのですか? ヴァルト様はカイ様が星に堕ちたことを……」

< 553 / 595 >

この作品をシェア

pagetop