嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 すいと顔を逸らしたジークヴァルトは、それきりリーゼロッテを見ようとしない。
 否定して欲しいという儚い願いは、あっけなく打ち砕かれてしまった。

「どうして!? どうして教えてくださらなかったのですか……!」

 乱暴に胸元のシャツを引っ張って、無理やり顔を下げさせる。
 苦しげに眉根を寄せたジークヴァルトに、それでもリーゼロッテは非難の声を上げずにはいられなかった。

「ひどい! ひど過ぎますわ!」

 ジークヴァルトだとしても許せなかった。そんな大事なことを知っていて、そのまま黙ってやり過ごそうとしていたなどと。
 胸を叩き攻め立て続ける中、ふいにルチアの泣き顔が脳裏を(よぎ)った。

「ルチア様……」

 それにベッティも。
 今頃どうしているのだろう。
 誰よりも大切なカイを失ってしまったあのふたりは――。

「ヴァルト様! ルチア様とベッティは今どこにいるのです!?」

 食ってかかる勢いのリーゼロッテに、ジークヴァルトは静かな口調で返してきた。

「彼女たちは、今ラウエンシュタイン城にいる」
「ラウエンシュタイン城に……?」

 戸惑いに、幾分か頭が冷えてくる。
 しかし完全に冷静にもなれなくて、大粒の涙とともにリーゼロッテはジークヴァルトの胸を強く突っぱねた。
 少し離れた距離から、ジークヴァルトを半ば睨み上げる。絶対に譲らない思いで、リーゼロッテは震える声を絞り出した。

「わたくしもラウエンシュタインに行ってまいります」

 何が何でもルチアとベッティに会いにいかなくては。

 会ったところで自分に何ができるというのか。
 そんなことを考えつくことすら、その時のリーゼロッテにはできなかった。

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