嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
◇
泣き腫らした目でリーゼロッテは流れる景色を見つめていた。
あのあとリーゼロッテのあまりに頑なな態度に、ジークヴァルトも駄目だとは言わなかった。ただ安全に移動する手配ができるまで待てと言われ、三日後の今日ひとりきりで馬車に乗り込んだ。
山積みの仕事を抱えているジークヴァルトは、どうしても領地を離れることはできなかったようだ。
表情では最後まで難色を示しながらも、守り石が連なる弁慶ネックレスを三重にしただけで、ジークヴァルトは何も言わずにリーゼロッテを送り出した。
(もう何が何だか分からないわ)
ようやく落ち着いた涙が再びせり上がってくる。
出発の準備が整うまでの間、リーゼロッテはエラにカイのことを確かめた。エマニュエルと同じ回答だったことに、ショックを受けたのは言うまでもない。
その上あのマテアスでさえ、そんな人物は知らないと困惑顔だった。
星に堕ちた者が“いなかったこと“にされるという意味は、人々の記憶からも消されてしまうということなのだろうか。
だがジークヴァルトやリーゼロッテのように覚えている者もいる。
つんと鼻の奥が痛くなって、リーゼロッテは握っていた小瓶のコルクの蓋を開けた。滑り落ちた涙をキャッチして、なみなみになったところでバスケットにしまいこむ。
新しい空の小瓶を取り出すと、揺れる水面はみるみるうちに上昇していった。こんなときに便乗するように、涙をためている自分が嫌になってくる。
しかしバスケットいっぱいに詰められた小瓶は、ジークヴァルトが用意してきたものだ。自衛するためにも涙の量は多い方がいい。それはリーゼロッテもよく分かっている。
『わ、この短時間で随分とたまったね』
すんと鼻をすすったところで、天井からジークハルトが顔だけをのぞかせた。
リーゼロッテがラウエンシュタイン城に着くまでは、ジークハルトがついて来ることになった。もちろんこれもジークヴァルトが望んだことだ。
『ねえ、リーゼロッテ』
言いながら、天井を抜けて降りてくる。
向かいの座席であぐらをかくと、ジークハルトはたのしげに体を左右に揺らし始めた。
泣き腫らした目でリーゼロッテは流れる景色を見つめていた。
あのあとリーゼロッテのあまりに頑なな態度に、ジークヴァルトも駄目だとは言わなかった。ただ安全に移動する手配ができるまで待てと言われ、三日後の今日ひとりきりで馬車に乗り込んだ。
山積みの仕事を抱えているジークヴァルトは、どうしても領地を離れることはできなかったようだ。
表情では最後まで難色を示しながらも、守り石が連なる弁慶ネックレスを三重にしただけで、ジークヴァルトは何も言わずにリーゼロッテを送り出した。
(もう何が何だか分からないわ)
ようやく落ち着いた涙が再びせり上がってくる。
出発の準備が整うまでの間、リーゼロッテはエラにカイのことを確かめた。エマニュエルと同じ回答だったことに、ショックを受けたのは言うまでもない。
その上あのマテアスでさえ、そんな人物は知らないと困惑顔だった。
星に堕ちた者が“いなかったこと“にされるという意味は、人々の記憶からも消されてしまうということなのだろうか。
だがジークヴァルトやリーゼロッテのように覚えている者もいる。
つんと鼻の奥が痛くなって、リーゼロッテは握っていた小瓶のコルクの蓋を開けた。滑り落ちた涙をキャッチして、なみなみになったところでバスケットにしまいこむ。
新しい空の小瓶を取り出すと、揺れる水面はみるみるうちに上昇していった。こんなときに便乗するように、涙をためている自分が嫌になってくる。
しかしバスケットいっぱいに詰められた小瓶は、ジークヴァルトが用意してきたものだ。自衛するためにも涙の量は多い方がいい。それはリーゼロッテもよく分かっている。
『わ、この短時間で随分とたまったね』
すんと鼻をすすったところで、天井からジークハルトが顔だけをのぞかせた。
リーゼロッテがラウエンシュタイン城に着くまでは、ジークハルトがついて来ることになった。もちろんこれもジークヴァルトが望んだことだ。
『ねえ、リーゼロッテ』
言いながら、天井を抜けて降りてくる。
向かいの座席であぐらをかくと、ジークハルトはたのしげに体を左右に揺らし始めた。