嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
『君の気持ちも分かるんだけどさ、ヴァルトも好きで黙ってたわけじゃないから。そこんとこは分かってあげてほしいかな?』
「龍が……目隠しをしてきたということですか?」
『そういうこと』

 肩をすくめたジークハルトに目を見開いた。なぜその考えに至らなかったのだろうか。
 ジークヴァルトはリーゼロッテよりもカイとの付き合いが長かった。

(ヴァルト様だってお辛くないはずはないのに――)

 それなのに自分ときたら、あんなにもひどい態度を取ってしまった。
 罪悪感に苛まれ、違う意味で涙が溢れ出した。

『大丈夫、ヴァルトもちゃんと分かってるよ』
「ですが……」

 俯いた頬から雫が滑り落ちる。
 向こうに到着したら、いち早くジークヴァルトに手紙を書こう。そう心に決めるも、未だ気持ちの整理がつけられない。

「ハルト様……カイ様はなぜ星に堕とす者になったのでしょう……」

 こういった話をジークハルトはいつも訳知り顔ではぐらかす。返事を期待するでもなく、リーゼロッテはやり切れない思いを吐き出した。
 しかしジークハルトは軽い感じで口を開いた。

『なぜってそりゃ、誰かの龍の託宣を阻もうとでもしたんじゃない?』
「ですがカイ様も託宣をお持ちでした……それなのに……」

 カイの足に龍のあざがあるのを、いつかリーゼロッテはこの目で見た。
 託宣の内容までは聞かなかったが、それを果たさずしてこの状況は一体何だというのか。

『それなら託宣はとっくに果たしてたんじゃない? もしくは自分の受けた託宣を拒んだとか?』
「自分の受けた託宣を……?」

 リーゼロッテがジークヴァルトとの子作りを断固拒否するといった感じだろうか?
 しかし龍の託宣は婚姻に関することだけではない。クリスティーナやヘッダのことを思うと、憶測の範囲を出ない話だった。

「ではエラ達がカイ様を覚えていないのはなぜなのですか?」
『さぁ? それはオレにも。ま、龍が介入してるってことは確かだよね』

 軽く肩をすくめたジークハルトを前に、桜色の唇がふるふると震え出す。

(どうして……どうしてなの)

 その思いだけがリーゼロッテの中を堂々巡りする。

 涙の小瓶を量産しながら、リーゼロッテは数日かけてラウエンシュタイン城へとたどり着いた。

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