嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
 閉じられっぱなしの天蓋のカーテンを割り、ベッティは薄暗い中を伺った。
 規則正しい寝息が聞こえてくる。ようやくルチアは眠りについたようだ。起こさないよう気配を殺しながら、涙の残る横顔を覗き込む。

 あれ以来、ルチアはろくに食事もせずに泣き暮れてばかりいる。その様子はまるで壊れてしまったからくり人形だ。
 そう思わせるほど繰り返し繰り返し、ルチアはカイの名ばかりを口にしている。

「カイ……」

 うなされたルチアが体をぎゅっと小さく丸め込んだ。祈るように握り込まれているのは、銀のロケットペンダントだ。
 あの日、あれを持っていたのはカイだった。
 それを今ルチアが手にしているということは、ベッティを置いて走り去ったカイは、確かにルチアの元に辿り着いたのだろう。

「どこにいるの……カ……イ……」

 正気を失ったまま、あの日からずっとルチアはカイのことを探し回っている。
 カイはいなくなったのだ。
 うんと以前から、カイ自らがベッティにそう宣言していたように――。

 ルチアのうわ言にすすり泣きが加わった。
 夢の中でもなお、ルチアはカイの姿を求め続けている。

(きっとこれが……)

 カイが欲しかったものなのだと。
 すとんとベッティの中で腑に落ちた。
 どうして自分では駄目だったのか。そう思わなくもなかったけれど。

 ベッティはカイのために生きると決めた。だからカイが望んだ未来ならば、この生涯をかけて守り抜こう。
 死を迎えるその日まで、ルチアが決して忘れることのないように。
 カイという(くさび)を、永遠にルチアに穿(うが)ち続けるために。

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