嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「どうして! どうしてみんなしてわたしに嘘つくの!? 知ってるなら教えてくれたっていいじゃないっ」

 そう叫んだ瞬間、ルチアの意識がふっと途絶えた。
 リーゼロッテが手を伸ばすまでもなく、背後からベッティが体を支え込む。

「眠り針を使いましたぁ。リーゼロッテ様はご心配なさらずですよぅ」

 一度ルチアを座らせて、ベッティは乱れた赤毛をそっと手櫛で整えた。
 ルチアは静かに寝息を立てている。涙で濡れるその頬に、新しい雫がひと筋滑り落ちていった。

「ルチア様はずっとこの様子なの……?」
「波はありますがぁ、時折こんなふうに癇癪を起こされますねぇ」

 ありのままの真実を伝えるべきなのだろうか。
 だがそんな残酷な宣告をしてしまったら。

(ルチア様は自ら命を絶ってしまうのでは……)

 そんな不安がよぎり、リーゼロッテは唇を戦慄(わなな)かせた。

「あとはわたしにお任せをぉ」
「でも……」
「リーゼロッテ様は着いたばかりでお疲れでしょうからぁ。あ、ルルさんリーゼロッテ様をお願いいたしますねぇ」
「かしこまりました」

 タイミングよくやってきたルルに連れられて、リーゼロッテは豪華な部屋に案内された。
 ふかふかのソファに沈み込むと、どっと疲れが押し寄せる。

(わたしは一体何しにここまで来たって言うの……)

 結局ルチアに掛ける言葉も見つからず、哀しみに寄り添うことすら難しく感じた。
 ジークハルトがいない今、ひとりで帰ることはおろか、この城から出ることさえもままならない。
 ジークヴァルトの心情も顧みず、勢いだけで公爵家を飛び出して来たことを思うと、さらに追い打ちをかけられた。

「とにかくまずはジークヴァルト様に(ふみ)を書かなくちゃ……」

 今さら謝ったところで、投げつけた言葉を取り消すことなどできはしない。
 それでも急にあの温もりが恋しくなって、リーゼロッテはぎゅっと自分の体を抱きしめた。

(来たばっかりで何を甘えているのよ)

 自分はいずれ必ずジークヴァルトの腕に帰れる。
 だがルチアもベッティも、もう二度とカイの顔を見ることすら叶わないのだ。

 どこまで行っても無力な自分に、リーゼロッテはひとりため息をこぼした。

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