嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
      ◇
 薄暗い中でルチアは瞼を開いた。
 頭の芯がどんより重い。閉め切られた天蓋の中はどこか知らない匂いに感じられた。
 自分はここで何をしていたのだろうか。
 そんなことを思いながら、気だるげな体を起こした。

「そうだわ……カイを探しに行かなくちゃ……」

 天蓋を割り寝台を降りると、素足のまま部屋を出る。急な眩しさに眩暈がするも、お構いなしにルチアは壁を支えにして歩いていった。
 どれだけ行けども誰ひとりとして見当たらない。
 あの寒々しい石造りの廊下もそうだった。

 目を奪う紅の光。支えたカイの重み。流れ続ける真っ赤な血。

 いきなりフラッシュバックした記憶に、ルチアはぶるりと身を震わせた。
 カイは怪我が酷くて動けないのかもしれない。あれだけの出血だ。今もどこかで動けなくなっていても不思議ではなかった。
 だからルチアの元に来られないのだと。
 無意識に、その先に起きた恐怖を見ないよう蓋をした。

「すぐ行かなきゃ……」

 今も苦しんでいるカイの元へ。

 しばらく廊下を彷徨って、外の風に誘われるようにルチアは早春の庭に出た。
 あてどもなく歩き出すも、ここはどこなのだろうとぼんやり思う。見覚えのない風景に、ルチアは一度立ち止まった。

「そっか……きっとカイは、わたしがここにいることを知らないんだ……」

 石畳が敷かれた小路の先のなだらかな丘に目が留まる。
 その向こう側には、敷地を囲うように高い塀が続いていた。壁沿いに歩いて行けば、ここから出られる門があるに違いない。

(こんがり亭に行ってみよう)

 そうすればダンたちに、カイの居場所を教えてもらえるかもしれない。
 駄目ならばあの秘密の隠れ家で待っていよう。あそこにいれば、カイは必ずルチアに会いに来てくれるはずだから。

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