嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「わたわたわたくし言ってるそばからご迷惑をっ!!」

 涙目のクラーラは異形の者が視えていない様子に思えた。
 だがこのブローチが自分を守ってくれていることだけは、経験則から理解しているのだろう。

「お願い、早く返してくださいっ」

 涙をためて手を伸ばすクラーラから、エルヴィンはさらに守り石を遠ざけた。
 それどころか腰を引き寄せて、離れないようにと無意識に拘束を強めていく。

「君に決めた」

 知らず口をついた一言に、確信を深めた唇が意地悪く弧を描いた。
 クラーラが見知らぬ男に守られているなど許せない。
 この仄暗い感情を、嫉妬と呼ばずして何と言えばいいというのか。
 気づいた以上、逃がすなどできるはずもなく。エルヴィンも自覚はしていた。この瞳はきっと今、獲物を見つけたハンターのようにクラーラを捕らえているだろうことを。

「そう言うことだから。覚悟してね? クラーラ」
「へ……え、あの、そういうってどういう……? エルヴィンさま、と、とりあえずいい加減それ返してほし……」
「駄目だよ。これは没収だ」
「えええっ、そんな! さっき取り上げたりしないってぇ……!」
「クラーラの魔除けは別にわたしが用意するから。ああ、ちょうど雨が止んできた。今から良い石を買いに貴族街まで行こうか」
「えっ、あのっ、えるっ、エルヴィンさま? あの、聞いて? ねぇ、エルヴィ……えるヴぃんしゃまぁあ……!」

 この日、エルヴィンはそのままクラーラをグレーデン家にお持ち帰りした。
 クラーラの反応はそれはそれは面白く、ずっと見ていて見飽きないものだと、エルヴィンだけでなくいきなり会わせた両親すらもそんな感想を漏らしていた。
 へリング子爵には事後報告で、翌日になって正式に結婚の申し込みがなされたのだった。

< 592 / 595 >

この作品をシェア

pagetop