嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
「どう? クラーラ、少しはましになったのではなくって?」
「カミラの見立てだからな。大分垢抜けたとオレも思うぞ?」
「ははははぃいっ、多大なご指南のほどっありがとうごじたいますっ」
「嫌になっちゃう。何度言ってもこの()ったら、放っておくとすぐ地味になるんだもの。一体どんな才能かしら」
「母上、嫁いびりはしないって約束でしょう?」
「誰もいびってなどいないじゃない」
「そうだぞ、エルヴィン。人聞きの悪いことを言うもんじゃない」

 迫力ある美男美女一家に囲まれて、クラーラがおどおどしながら立っている。
 その姿は使用人から見てもやはり小動物のようだった。

「すみすみすみませんっ、わ、わたくしが田舎者すぎるばっかりにっ。あの、エルヴィン様、今からでも間に合うと思います! 父に言ってここここの婚約は……」
「駄目だよ、クラーラ。わたしのことはエルって呼ぶように言っただろう?」
「そ、そんなの無理ですっ」
「どうして? 夕べ寝台の中では上手に呼べたじゃないか」
「いやぁあぁあっ、ええええええええるヴぃんしゃまぁっ」

 真っ赤になったクラーラがエルヴィンの口を手のひらで塞ぎにかかる。
 じゃれあうふたりを前に、カミラが大袈裟なため息をついた。

「まったく……エルヴィンったらずっとこの調子なんだもの。どこで育て方を間違えたのかしら」
「別にいいじゃないか。さっさと婚姻を済ませてついでに爵位も譲ってしまおう」
「それもそうね。王都に移り住む日が今から本当に楽しみだわ」

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