嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
 翌日も午後遅くに目覚め、だるい体で湯につかった。旅から戻って以来、ずっとこれの繰り返しだ。ジークヴァルトが戻って来るや(いな)や、いつも寝室に直行だ。
 婚姻を果たしてからというもの、睦言(むつごと)以外会話らしきものはほとんどなかった。

(ずっとあーんもお膝抱っこもないのよね)

 そばにいるときは、常にベッドの上で裸族(らぞく)状態だ。
 以前のようにサロンで一緒にお茶をたのしむこともない。体力も限界で、日中は部屋から出る元気もなかった。
 公爵夫人となってから、ジークヴァルト以外では、エラとロミルダくらいにしか会っていない気がする。

 大きな腕にぎゅっとされ、ぬくもりを感じているだけで満たされるのに――

 そのことを訴えようにも拒む暇もなく、なし崩しに情事にもつれ込む毎日だ。あの抗えない快楽は、どこか狂気じみている。安心できるはずのジークヴァルトのそばが、今いちばん落ち着けないでいた。

(快楽に弱すぎるこのカラダも困りものだわ)

 これも異世界補正なのだろうか。ジークヴァルトに触れられると、どこもかしこも気持ちよすぎて、あっさりすべてを受け入れてしまっている。こんな自分にも問題があるのだろう。

 意味もなく湯船をかき混ぜながら、無意識にため息が口をついた。このままでは本格的にこれが日常で当たり前になってしまう。

「なんとか打開策を考えなくちゃ……」

 つぶやきが広い浴室に反響する。エラだけでなく、ロミルダにも意見を伺った方がいいかもしれない。ジークヴァルトの乳母を務めた彼女なら、何かしらいい案を出してくれるに違いない。

 湯から上がりガウンを羽織る。浴室を出ようとして、リーゼロッテは「あっ」と大きな声を上げた。すかさずロミルダが顔を出す。

「奥様、どうかなさいましたか?」
「ごめんなさい、ロミルダ……月のものが……」

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