嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 先に気づいていれば、おろしたてのガウンを汚すこともなかったのに。しゅんとうつむくと、気づかわしげにロミルダが着替えを差し出してきた。

「そのように落ち込むことはございませんよ。本来、婚姻の託宣が降りてから縁を結ぶところを、前倒ししてご結婚されたのです。お世継ぎはまだまだ先のことと、気楽に構えていて大丈夫ですから」
「あ……」

 正直そこまで考えていなかったが、公爵夫人として世継ぎを身ごもるプレッシャーは、これから常に感じさせられるのだろう。やさしく微笑みながら、ロミルダはさらにフォローを入れてくる。

大奥(リンデ)様もジークヴァルト様を授かるまで三年以上かかりました。それにもともと貴族は子ができにくいとされています。長い間、狭い貴族社会で婚姻を繰り返してきた弊害でしょうね」
「そう……ありがとう、ロミルダ。でもヴァルト様にはどう伝えようかしら……」

 いつもなし崩しにエッチにもつれ込んでしまう。今夜はジークヴァルトの暴走を、何としても食い止めなくては。

「わたしから旦那様にお伝えしましょうか?」
「いえ、自分で話してみるわ」

 生理が来たから今夜はなしね。そう他人に伝えさせるのも如何(いかが)なものか。どのみち来るたびに言わなくてはならないことだ。自分で口にするのも恥ずかしいが、夫婦となったからにはそんなこと言ってもいられない。

「それと月のものが終わるまでは、わたくし、自分の部屋で休もうと思うのだけれど……」
「承知しました。奥様の寝室はいつでも使えるように整えてありますからご安心ください。いつものように薬湯もご用意いたしますね」
「ありがとう、ロミルダ」

 それほど重い方ではないが、二日目くらいまではお腹が痛くなったりもする。今日あたりから、少しずつ部屋から出ようかとも思っていたが、あきらめておとなしくしているしかないだろう。

(とにかくヴァルト様に伝える言葉を考えなくちゃ……)

 そう意気込んで、リーゼロッテはひとりうなずいた。

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